海洋生物の調査研究
沖縄本島周辺海域は、北太平洋に分布するザトウクジラの繁殖海域の1つであるとされています。総合研究センターでは、1991~2012年の21年間にわたり、例年1~4月に沖縄本島周辺海域に来遊するザトウクジラの調査を実施してきました。本調査では、尾びれ腹側の模様や後縁の形状を用いた個体識別法、および行動観察により、計1402個体の雌雄を判別し、沖縄本島周辺海域における分布特性を分析しました。その結果、同海域はザトウクジラの約9割が水深200mよりも浅い水深帯に分布することがわかりました。さらに「成熟オス」、「成熟メス」、「シンガー(注1)」、「仔連れメス(新生児を伴っているメス)」の4つの性状態に分類し、それぞれの分布特性についても分析しました。その結果、交尾を目的に同海域に来遊していると考えられる「成熟オス」、「成熟メス」、「シンガー」は水深200m以浅の海域の中でも特に沖合側に多く分布し、一方で出産や子育てを目的に来遊している「仔連れメス」は、沿岸側や島と島の間の水深100m以浅の海域に多く分布する傾向にあることがわかりました。これらの結果から、「仔連れメス」は、より海況の安定した沿岸、島嶼間の浅瀬に分布し、育児に専念していることが示唆されました。
注1:「シンガー」:鳴音を発しているオス。本種のオスが繁殖海域で鳴音(ソング)を発する行動は、オスの繁殖に関連した行動とされている
Nozomi Kobayahsi, Haruna Okabe, Isao Kawazu, Naoto Higashi, Hirokazu Miyahara, Hidehiro Kato, Senzo Uchida(太字:財団職員)
Spatial distribution and habitat use patterns of humpback whales in Okinawa, Japan
Mammal Study
http://dx.doi.org/10.3106/041.041.0405
沖縄本島周辺海域で確認されたザトウクジラの親子
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