1. 国内4海域に来遊するザトウクジラの集団構造に関する論文が掲載されました!
沖縄美ら島財団総合研究所

海洋生物の調査研究

国内4海域に来遊するザトウクジラの集団構造に関する論文が掲載されました!

ザトウクジラは、夏季は高緯度海域で摂餌を行い、冬季に低緯度海域で繁殖(交尾、出産、子育て)をすることがわかっています。西部北太平洋海域では、ロシア周辺が摂餌海域、沖縄、奄美、小笠原、フィリピンマリアナ諸島周辺が繁殖海域、北海道等が回遊途中海域として知られています。また、尾びれの模様や形状を基に個体を識別することが可能です。
今回、国内海域間の交流や関係性について解明するため、(一財)沖縄美ら島財団、認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャー(東京都小笠原村)、 一般社団法人小笠原ホエールウォッチング協会(東京都小笠原村)、奄美クジラ・イルカ協会(鹿児島県奄美市)、国立大学法人北海道大学北方生物圏フィールド科学センター(北海道函館市)、大阪大学サイバーメディアセンター(大阪府茨木市)の研究チームは、1989-2020年に沖縄、小笠原、奄美、北海道の4海域(以下、国内4海域)で撮影されたザトウクジラ3,532頭分の尾びれ写真を、尾びれ自動照合システムを用いて照合しました。
その結果、沖縄-北海道間で3頭、沖縄-小笠原間で225頭、沖縄-奄美間で222頭、小笠原-奄美間で36頭の一致個体が見つかりました。これらの一致個体頭数を基に、海域間の交流指数や各海域の回帰指数を算出したところ、国内4海域は、1つの共通の集団によって利用されている可能性が高いことが判明しました。また、海域間によって交流頻度は異なり、フィリピン海の太平洋側(小笠原からマリアナ諸島)と東シナ海側(奄美、沖縄、フィリピン)をより頻繁に利用する2つの小グループが存在する可能性が示唆されました。日本周辺のザトウクジラの保全に向け、大変貴重な発見、報告となりました。今後は、共同でDNA解析手法を用いてより詳細な集団構造の解明を目指します。

画像
ブリーチするザトウクジラ(左上)、1頭1頭異なる尾びれの特徴(左下)と研究結果概略図(右)

著者名

Nozomi Kobayashi, Satomi Kondo, Koki Tsujii, Katsuki Oki, Masami Hida, Haruna Okabe, Takashi Yoshikawa, Ryuta Ogawa, Chonho Lee, Naoto Higashi, Ryosuke Okamoto, Sachie Ozawa, Senzo Uchida, Yoko Mitani (太字:財団職員)

題名

Interchanges and movements of humpback whales in Japanese waters: Okinawa, Ogasawara, Amami, and Hokkaido, using an automated matching system

雑誌名

PLOS ONE

論文リンク

https://doi.org/10.1371/journal.pone.0277761

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総合研究所
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