海洋生物の調査研究
ザトウクジラのオスは、摂餌シーズン終盤から繁殖シーズンにかけて、「ソング」と呼ばれる特徴的な鳴音を発します。ソングの役割は、まだはっきりとはわかっていませんが、メスへの求愛、オス同士のけん制など、繁殖に関連した行動の1つだと考えられています。
(一財)沖縄美ら島財団の研究グループは、沖縄県本部半島沖に水中マイクを設置し、繁殖シーズン中の約2週間、24時間継続録音を実施することで、ソングは日中よりも夜の時間帯に、より活発に発せられることを明らかにしました。また洋上調査結果から、オスは、主に1頭の時にソングを発することを報告しました。これまでの研究から、繁殖海域では、個体同士の合流や、交尾を巡る競争集団が形成されるのは、日の出直後から日中に多く、午後から夕方にかけて解散、縮小する傾向にあるとされています。
これらの結果から、個体同士の合流が活発な日中は、夜間に比べて1頭のオスが少ないことから、ソング活動が減少する可能性が示唆されました。一方、日中と夜間で、オスが分布場所を変えている可能性も考えられることから、今後はより沖合の複数個所に水中マイクを設置し、さらに研究を進めていきます。
Nozomi Kobayashi, Haruna Okabe, Naoto Higashi, Hirokazu Miyahara H, Senzo Uchida.(太字:財団職員)
Diel patterns in singing activity of humpback whales in a winter breeding area in Okinawan (Ryukyuan) waters
Marine Mammal Science
DOI: 10.1111/mms.12790
沖縄県本部半島沖に設置された水中マイク(左)とソング活動の日周変動を表したグラフ(右):横軸が時間(0時→23時)、縦軸がソング活動指数を表す。
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