海洋生物の調査研究
卵生のトラザメ(Scyliorhinus torazame)に対し、超音波画像診断(エコー検査)を同一個体に対して約半年間、毎日実施することで、産卵周期を非侵襲的かつストレスをかけることなく把握することに成功しました(図1)。さらに、エコー検査と並行して3日に一度の経時的な採血を行い、産卵周期と同期した性ステロイドホルモンの周期的変動を見出しました。特に、受精・卵殻形成前に血液中のテストステロン濃度が低下し、その直後にプロゲステロン濃度の一過的上昇が起こりました(図2)。毎日採血を行った実験から、この血中プロゲステロン濃度の上昇は輸卵管内に卵殻が見出される2日前に起こることもわかり、排卵・受精・卵殻形成に重要な役割を果たすことが示唆されました。卵生さらには胎生を含めた軟骨魚類の生殖メカニズム解明にむけて、重要な基盤的手法と知見を提供する成果です。
General and Comparative Endocrinology, 327: 114076.
Inoue, T., Shimoyama, K., Saito, M., Wong, M K-S., Ikeba K., Nozu. R., Matsumoto, R., Murakumo, K., Sato, K., Tokunaga, K., Kofuji, K., Takagi, W. and Hyodo, S. 2022.
図1 トラフザメに対するエコー検査の様子とエコー画像
(右図の白い矢印はエコー検査によって観察された卵殻を示している。)
図2 トラフザメ産卵周期と血中プロゲステロンとテストステロンの変動
(色付きの枠は体内に卵殻が観察された期間、赤線は血中プロゲステロン濃度、
青線は血中テストステロン濃度、横軸は日数を示している。)
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