海洋生物の調査研究
私たち哺乳類の胎仔は、産まれてくるまでの数か月、お母さんの子宮の中で過ごします。このような繁殖方法を胎生と言います。胎生の動物の胎仔が子宮内で排泄すると、羊水を汚染してしまい、胎仔の成長に重大な悪影響を及ぼしてしまいます。この危険を回避するために、哺乳類の胎仔は産まれてくるまで、糞を体内に貯蔵する仕組みを持っています。
板鰓類(サメやエイの仲間)には、胎生の種類が多く見られます。私たちは、胎生のエイの胎仔を調査することで、彼らも哺乳類と同様、糞を貯蔵する仕組みをもっていることを明らかにしました。
私たちの調査では、哺乳類とエイでは、糞を貯蔵する仕組みに違いがあることも明らかになりました。胎仔が胎盤の血液を介して栄養をもらう哺乳類とは異なり、胎生エイの胎仔は、子宮壁から分泌される液体(子宮ミルク)を飲んで成長します。そのため、胎生エイは哺乳類より多い量の糞が生成されます。その糞を体内に貯蔵するために、エイの胎仔は、比率にして大人の4-6倍の巨大な腸を持っています。
Taketeru Tomita, Masaru Nakamura, Yasuhisa Kobayashi, Atsushi Yoshinaka & Kiyomi Murakumo (太字:財団職員)
Viviparous stingrays avoid contamination of the embryonic environment through faecal accumulation mechanisms
Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-020-64271-2
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(左)腹側からみたアカエイの胎仔。巨大な腸を持っています。
(右)胎仔の腸の断面写真。後半部分に糞が詰まっています。
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