1. 沖縄周辺海域のザトウクジラの分布状況について明らかにした論文が日本哺乳類学会論文賞を受賞しました
沖縄美ら島財団総合研究所

海洋生物の調査研究

沖縄周辺海域のザトウクジラの分布状況について明らかにした論文が日本哺乳類学会論文賞を受賞しました

当財団の研究グループが学術誌Mammal Studyに発表したザトウクジラの分布等に関してまとめた論文が、平成29年度日本哺乳類学会(会員数約1000名)論文賞を受賞しました。
同研究では、沖縄周辺海域で実施されてきたザトウクジラ調査結果をもとに、ザトウクジラの分布状況について詳細を報告しました。21年に渡る長期データから、観察の難しい大型海棲哺乳類の基礎生態学的知見を得た点や、ホエールウォッチング等の人間活動を見直す上で貴重なデータを提供している点が特に優れていると評価され、受賞となりました。

研究の概要

ザトウクジラの繁殖海域の一つである沖縄周辺海域では、例年1月~4月にその来遊が確認され、当財団では1991年から2012年までの約21年にわたり、ザトウクジラの調査を実施してきました。ザトウクジラの尾びれの腹側に見られる模様や後縁の形状は各個体で異なるため、収集した尾びれ写真を地道に照合することで個体を識別することができます。私たちの研究グループでは、この特徴を利用した個体識別法と、行動観察により、これまでに1286個体を識別、その内178個体の雌雄を判別しました。さらに性別および仔連れ群といった群れの構成を分類し、分布状況について水深データ等を用いて解析しました。
解析の結果、沖縄周辺海域では、新生児を連れた子育て中のメスが島に近く水深100mより浅い海域に分布していることがわかりました。一方、オスや新生児を連れていないメスは、より沖合の海域に分布しており、子育て中のメスとは異なる海域を利用していることがわかりました。これらのことから、新生児を連れた子育て中のメスは、性的に活発なオスの接近や沖合の荒れた海況を避け、沿岸域で子育てのためにエネルギー消費を抑えている可能性が推察されました。これに対し、オスや新生児を連れていないメスは、共に沖合に分布し、交尾などの繁殖活動を行っていることが示唆されました。

受賞について

地元住民の皆様やホエールウォッチング事業者の皆様をはじめ、多くの方々のご協力のもと、21年間に及ぶ調査を継続できたことが、これまで不明な点の多かったザトウクジラの繁殖生態解明や、この度の論文賞の受賞につながったと考えています。
財団では、調査研究事業で得られた情報を、論文や講演会などを通じて積極的に発信しています。これらの活動を通して、沖縄に来遊するザトウクジラの興味深い生態を一般に広めると共に、ザトウクジラを含む沖縄の自然環境保全に対する意識の向上に貢献できればと考えています。

著者名

Nozomi Kobayahsi, Haruna Okabe, Isao Kawazu, Naoto Higashi, Hirokazu Miyahara, Hidehiro Kato, Senzo Uchida(太字:財団職員)

題名

Spatial distribution and habitat use patterns of humpback whales in Okinawa, Japan

雑誌名

Mammal Study

DOI

http://dx.doi.org/10.3106/041.041.0405

ザトウクジラ調査応援ページ

https://app.dandon.jp/dandon/user/events/139155e6aa6e52e203e6c8272df304db5da2a4b7f2121fc370add9ba6ce6b76c

 
  • ザトウクジラ調査の様子
    ザトウクジラ調査の様子
  • 論文著者である財団職員一同
    論文著者である財団職員一同
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TEL:0980-48-2266   FAX:0980-48-3900

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