海洋生物の調査研究
ホホジロザメは、最大全長6mに達する大型のサメで、映画「ジョーズ」のモデルとしても知られています。一方で、母親の胎内にいる胎仔の成長過程は未だ謎につつまれています。
人間をはじめとした哺乳類など多くの胎生動物は、生まれた時は歯を持たず、産後しばらくたってから歯が生えてきます。今回、世界的に極めて希少なホホジロザメの妊娠初期の胎仔標本を観察したところ、妊娠初期の段階ですでに歯を持つことが明らかになりました。ホホジロザメの胎仔が歯を持つことは、種類の近いサメの研究から予想されていましたが、実際に確認されたのは初めてのことです。
過去の研究により、ホホジロザメは出産前にすでに食事を開始していることが知られています。胎仔は子宮内で母親から供給される無精卵のカプセルを捕食し、体重が20キロほどになるまで成長します。ホホジロザメの胎仔の歯は、この無精卵のカプセルを切り裂くのに用いられていると考えられます。
妊娠初期のホホジロザメ胎仔の頭部(右)と胎仔歯の電子顕微鏡写真(左)
さらに国立大学法人 琉球大学と共同で、X線CTスキャンを用いて妊娠中期の胎仔のあごの内部を観察したところ、「胎仔の歯」から「大人の歯」に生え変わる過程をとらえることに初めて成功しました。「胎仔の歯」は、胎仔が産まれる前に、ナイフのような形をした「大人の歯」に生え変わり、産まれた後の狩りに備えるようです。
妊娠中期の胎仔のあごのX線CTスキャン画像。胎仔の歯から大人の歯に生え変わる過程が見られる
ホホジロザメは世界的に有名なサメですが、妊娠個体はきわめて珍しく、その繁殖生態はいまだ謎につつまれています。私たちは今後も調査を継続し、ホホジロザメの繁殖の謎を解明したいと考えています。
Taketeru Tomita、Kei Miyamoto、Akira Kawaguchi、Minoru Toda、Shin-ichiro Oka、Ryo Nozu、Keiichi Sato(太字:財団職員)
Dental ontogeny of a white shark embryo
Journal of Morphology
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jmor.20630/abstract
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