海洋生物の調査研究
ミツクリザメは水深300-1000メートルの深海に生息するサメ類の一種で、その歯がむき出しになった恐ろしげな容貌から「goblin shark」として広く知られてきました。しかし、深海生物を観察することの難しさから、その生態はいまだ謎につつまれています。特にミツクリザメの最大の特徴といえる大きく突出した顎が獲物を捕らえるときにどのように役に立っているのか全く分かっていませんでした。
沖縄美ら島財団総合研究センターの研究グループは日本放送協会(NHK)と共同で、2008年と2011年に撮影された世界初のミツクリザメの捕食映像を解析し、その詳細を明らかにしました。その結果、ミツクリザメはごく短時間の間に、顎を大きく前方に射出し、獲物を捕らえることが明らかとなりました。顎の突出速度は秒速3メートルと、現時点で魚類のなかで最速です。さらに、突出距離も全長の9%とサメ類の中で最大であることが分かりました。研究グループはこの行動を「slingshot feeding (パチンコ式摂餌)」と名付けています。
ミツクリザメは遊泳速度が非常に遅いサメと考えられ、素早く突出する顎は、餌の少ない深海で確実に餌を捕えるための適応と考えられます。本研究は、深海生物が餌を捕えるためにさまざまな適応を遂げてきたことを教えてくれます。
Nakaya K, Tomita T, Suda K, Sato K, Ogimoto K, Chappell A, Sato T, Takano K, Yuki Y(太字:財団職員)
Slingshot feeding of the goblin shark Mitsukurina owstoni (Pisces: Lamniformes: Mitsukurinidae)
Scientific Reports
http://www.nature.com/articles/srep27786
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