亜熱帯性植物の調査研究
アカギBischofia javanica Blumeは、沖縄県内全域の街路や公園内に植栽されている常緑高木である。沖縄の名木百選や天然記念物にも指定されており、沖縄において自然や文化的価値の高い重要な樹種である。近年、沖縄県内全域の街路や公園内において、外来ヨコバイColoana arcuata Dworakowska (通称、アカギヒメヨコバイ) が発生し、葉の褐変や落葉などの被害が確認されている。離島を含む沖縄県全域のアカギの植栽本数は約12,000本であり、そのうち76%以上が本種による被害を受けており、被害木の枯死事例は約70件に上る (沖縄県環境再生課 未発表)。本種を防除するためには、人体や周辺環境に配慮した防除技術の確立が求められる。
そこで、本調査研究では、周辺環境に配慮した防除技術の確立を目的とし、薬剤効果試験を実施した。本調査研究は令和3年度アカギ被害対策検討事業委託業務 (沖縄県)の一環で実施した。
令和3年9月~令和4年2月、名護市において、薬剤Aを施用した区、薬剤Bを施用した区 (9月24日、2月20日の2回施用)、無処理区を設定し、各区3本ずつ供試した。ほぼ2週間毎に地上3~4 m付近の小葉10枚を静かに採取し、葉上の本種成虫・幼虫を計数した。
幼虫数は無処理区において12月をピークに増加しているが、薬剤A施用区は、調査期間中ほぼ0の状態を維持していた (図-1)。また、薬剤B施用区の幼虫数は、調査開始当初は無処理区よりも多い時期があったが、次第に減少した。
一方で、成虫数については全ての処理区で低い状態を維持していた (図-1)。以上のことから、特に幼虫に対して樹幹注入剤による効果の可能性が示唆された。
全ての調査木6本で薬害は観察されなかったことから、薬剤による樹体への影響は低い可能性が示唆された。
気候変動・温暖化により益々、沖縄県や海洋博公園における病害虫問題は大きくなってくると思われる。地道な調査と試験により対応していくことが最善な対策である。今後の成果とその成果を応用した病害虫対策に期待している(上田顧問:ぎふワールド・ローズガーデン 理事)。
研究の目的、取り組み状況等は評価できる。また、その実用的な効果についても明確であり、応用性が高いと思われる。研究発表がまだ少なく、さらに増やすよう努力されたい。産業との結びつき、実用的応用例など、具体的な検証も試みるといいと思う(池田顧問:琉球大学 名誉教授)。
図-1 アカギ葉上の外来ヨコバイの個体数の推移 (左:幼虫数、右:成虫数)
*1植物研究室
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