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  1. 5)建造物琉球漆塗・琉球赤瓦製作施工 文化財保存技術(伝承)事業
沖縄美ら島財団総合研究所

琉球文化の調査研究

5)建造物琉球漆塗・琉球赤瓦製作施工 文化財保存技術(伝承)事業

幸喜 淳*1・佐久本 純*1・鶴田 大*1・嘉手苅 なつき*1

1. はじめに

写真- 1 開講式同日に実施した共通講義の様子
写真- 1 開講式同日に実施した共通講義の様子

本事業は沖縄の伝統的建造物保存に必要な2つの分野、すなわち(1)伝統技法による漆塗装、(2)手作り瓦の製作・葺きについての技術者の養成を行う目的で、令和2年度より文化庁の助成を受けて開始した事業である。現在、琉球王国時代以来の伝統技法による漆塗装、手作り瓦の製作・葺きの技術は活用機会の少なさもあり、その継承が困難な状況となっている。そこで、現在では数少なくなった技術者や、漆・瓦に関わる専門的知見を持つ識者を講師に招いて技術伝承者の養成を行った。
本事業は本年度以降も継続的な実施を予定しており、本事業による所定のカリキュラムを修めた者は今後、県内指定文化財建造物などの建造物漆塗装、瓦製作・葺きで活躍することが期待される。

2. 研修内容

表-1 実施研修内容一覧

表-1 実施研修内容一覧
表-1 実施研修内容一覧

本年度は、建造物琉球漆塗分野と、琉球赤瓦製作施工分野(古瓦製造と瓦葺き)の3分野に分けることで、より深い内容の実習・講義を行うことができた。建造物琉球漆塗分野4名、琉球赤瓦製作施工分野は古瓦製造5名、瓦葺き4名が受講した。新型コロナウイルス感染症の影響を考慮しながら、開講式は令和3年12月2日(木)に行い、文化財保存・伝承に関する共通講義も同日に実施した(写真-1)。研修カリキュラムの計画は、建造物琉球漆塗分野では計72時間(講義7時間、実習65時間)、琉球赤瓦製作施工分野の古瓦製造は計50時間(講義8時間、実習42時間)、瓦葺きは計52時間(講義8時間、実習44時間)とした。新型コロナウイルス感染症対策の為、実施できなかった内容もあったが、関係団体の協力も得て可能な範囲でのカリキュラムを実施することができた。

3. 成果と課題

1)建造物琉球漆塗
室瀬和美氏による文化財修復についての講義では、国産漆の特性を活かした建造物の保存修理方法について教えて頂いた。また、日光社寺文化財保存会の佐藤則武氏(栃木県)を講師に招き、日光の建造物漆塗装の仕様を実習で具体的に学んだ。有限会社彩色設計小野村勇人氏(京都府)の実習では、前期・後期と漆塗装のみならず繧繝彩色等の技法実習を実施できた(写真-2)。その他、実際の外壁塗装現場を想定し、垂直に立てた板に弁柄塗装を施す実習も行った。

2)琉球赤瓦製作施工・古瓦製造
沖縄県立芸術大学の森達也氏による講義では、中国明代の瓦や沖縄の瓦の歴史について学んだ。伝統的な手づくり瓦の製作は現在中国でもほとんど残っていないことに触れ、本事業における手づくり瓦の製作技術を伝承する意義を再確認した。また、与座範弘氏の講義ではクチャや赤土の種類や特徴を化学組成から説明いただき、古瓦から現代の赤瓦の特質を確認した。日本伝統瓦技術保存会の長谷川成幸氏(奈良県)の講義では、保存会の成り立ちや選定保存技術認定までの経緯などをお話頂いた。
古瓦製造での実習では、昨年度に引き続き沖縄県芸術大学陶芸分野の学生や陶芸家が、製作から焼成までの技術を身に付けるため、前期・後期と分け、繰り返し実習に取り組んだ。以前に比べより丁寧に製作できるようになったが実用するにはまだ難しく、引き続き取り組む必要があることを再認識した。次年度以降も、製作工程を繰り返し行い、より品質の高い瓦作りを目指したい(写真-3)。

3)琉球赤瓦製作施工・瓦葺き
瓦葺き実習に関しては、沖縄県内で瓦葺きの施工経験がある受講者を中心に実習を行った。(写真-4)。瓦葺き、漆喰塗について、伝統的かつ高度な技術を習得するのは困難であるため、次年度は実寸大の架台を製作し実習を行う予定である。

4. 外部評価委員会コメント

伝統技術の解明と人材育成の必要性が強調されているが、その先行的取り組みとして特筆できる。(高良顧問:琉球大学名誉教授)。

  • 写真-2 建造物彩色基礎実習
    写真-2 建造物彩色基礎実習
  • 写真-3 赤瓦伝統製作技術【前期】実習
    写真-3 赤瓦伝統製作技術【前期】実習
  • 写真-4 赤瓦漆喰塗基礎 実習
    写真-4 赤瓦漆喰塗基礎 実習

*1琉球文化財研究室

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