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  1. 9)タイワンハブ駆除技術開発
沖縄美ら島財団総合研究所

海洋生物の調査研究

9)タイワンハブ駆除技術開発

岡 慎一郎*1

1.はじめに

タイワンハブは台湾および中国南部、インドシナ半島北部などに広範囲に生息する有毒ヘビの1種であり、特定外来生物に指定されている。沖縄県内では、1993年に名護市での定着が確認されて以降、分布域は拡大しており、外来種対策や公衆衛生上の観点から生息数を減少させる必要がある。そこで本事業では、タイワンハブの効率的な駆除技術を開発するとともに、海洋博公園や世界自然遺産となったやんばる地域への本種の侵入防止、駆除等の実践的取り組みも展開する。昨年度までの活動で、なごアグリパークにおける侵入防止柵の高い効果が確認できたとともに、得られたタイワンハブ標本からいくつかの生態的知見を取得している。

2.疑似餌トラップの開発とIOT化の検討

写真-1 ソーラー発電システムを組み込んだ新規トラップ(試作品)
写真-1 ソーラー発電システムを組み込んだ
新規トラップ(試作品)

ハブ捕獲トラップの誘因用の餌としては、生きたハツカネズミが使用されている。しかし、ネズミの管理およびトラップの見回りに多くの労力が必要であるとともに、近年社会的にも関心が高まっている動物愛護の視点からも問題がある。そこで、ハブ類が獲物の特定に使用する嗅覚と温感に着目し、人工の誘引餌の開発を試みている(写真-1)。
本年度は、3Dプリンター産物と市販品を組み合わせたソーラーシステムを搭載した動く熱源を開発した。これを市販の捕獲罠に組み込み、野外での耐久試験を行なった。十分な耐久性と確実な駆動が確認できたため、来年度から実地投入による性能試験を行う。
近年、デバイスに通信機能を搭載することで、機能を大幅に向上させるIOT(Internet of Things)化が様々な場面で導入されている。そこで、上記機械化トラップに通信機能を付帯し、定期的に撮影データを送信させ、その写真にターゲットが写っているかを自動判定する人工知能の開発に着手した。現在、膨大な画像データを用いたディープラーニングを行っている。また、撮影システムや電源供給等に関する事項も概ね決定している。この仕組みが完成すれば、駆除事業の中枢管理が可能となり、見回りの頻度を下げるなどの大幅な省力化が可能となる。

3.駆除の実態調査と未侵入域への侵入防止策

写真-2 海洋博公園に設置されたハブ侵入防止ネット
写真-2 海洋博公園に設置されたハブ侵入防止ネット

現在、ハブ類の駆除を行っている本部町に聞き取りを行った結果、近年捕獲されるハブ類はほとんどがタイワンハブであり、捕獲強度を上げた場合でも捕獲数が減ることはないとのことであった。また、分布も名護市方面から本部半島先端方向に拡大傾向にあり、海洋博公園から約5kmのところまで前線が達している状況にあった。
昨年度までの調査で、ハブ侵入防止柵の高い効果が確認されている。これを受け、国営公園管理部に海洋博公園への外来毒蛇の侵入防止を目的とした柵の設置を提案した。その結果、一部の区間に試験的に柵が設置された。以降、これらの柵は園内全体に敷設されるとのことである。

4.外部評価委員会コメント

本来、ホンハブがいたがそれに代わってタイワンハブが入ったのなら、やはり長い年月をかけて手で駆除する必要がある。現段階ではトラップはあまり成果を上げていないが、人工知能の活用にも望みをかけたい(亀崎顧問:岡山理科大学 教授)。


*1動物研究室

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