亜熱帯性植物の調査研究
(一財)沖縄美ら島財団が指定管理を行っている熱帯ドリームセンターでは、一年を通して熱帯・亜熱帯性植物を展示し、利用者の満足度向上に努めている。一方で、利用者は常に新しい展示手法を求める傾向にあり、利用者を飽きさせない展示を展開させていく必要がある。そこで、熱帯ドリームセンターの利用促進及び魅力向上を図ることを目的に、昨年度から試行を開始したパルダリウム手法を用いた植物展示について経過を報告する。
昨年度までに沖縄の在来植物を植栽した水槽①(写真-1)及び食虫植物を植栽した水槽②(写真-2)の2種類を製作し、経過観察を行ってきた。
沖縄在来植物を植栽した水槽①は、縦長の壁面に着生材(エピウェブパネル)及びFRP素材で製作した擬岩を張り付け、コケ及びシダ植物、ラン科植物など約20種を植栽し、平成31年4月から令和元年12月までの9か月間の展示を行った。展示期間中、ユウコクラン、キンギンソウ、リュウキュウサギソウなどのラン科植物については水槽内で開花し、生育も良好であったが、壁面への着生を試みたコケは生育が悪く、何度も張り替える必要があった(写真-1右)。
食虫植物を植栽した水槽②では、着生材及び発泡ウレタンで製作した擬岩を配置し、壁面にはフィロデンドロン、ネペンテスなどを着生、擬岩にはムシトリスミレの仲間、クリプタンサスなどを植栽し、令和元年11月から令和3年3月までの1年4か月間展示を行った。状態の悪くなった植物は交換を行うことで、展示期間を長くすることが出来たが、壁面パネルの汚れや循環システムの不具合により展示を終了した(写真-2)。
水槽①については、高湿度を好むラン科植物、シダ植物は生育を維持できるが、成長が徒長気味であったことや茶褐色に腐敗する種類もあったことから光量や通風の確保とともに、植物を交換できる植栽桝に変更する必要があった。
水槽②については、植物の交換が可能な植栽桝への変更、光量を改善し、密閉ではなく前面を開放したことで通風を確保し、展示期間を長くすることが出来た。しかし、水槽①、②ともに、壁面資材に常に水を循環させていたことから、壁面資材の汚れが目立ち、また、潅水むらも課題であった。
過年度の課題を踏まえ、改良型の製作を試みた。改良型は、高さ145cm、幅120cmの大型水槽①を使用し、前回同様、やんばるギャラリーでの展示を想定、沖縄の在来植物、特にやんばる地域で見られる植物を植栽することとした(写真-4)。改良型では、水槽①,②で課題であった壁面資材を使用せず、発泡ウレタンで岩場を模した擬岩を製作し、流木などを組み合わせて立体的な装飾を行った。また、植栽桝及び通気ファンだけでなく、水槽の周囲にも擬岩装飾を施すことで、縦だけでなく横にも広がりを作り、やんばるの渓谷に近い雰囲気を作り出すことを心掛けた(写真-5)。さらに、改良型パルダリウムではろ過装置や大型ポンプは使用せず、水草を浮かべ、リュウキュウメダカを飼育することで、水の浄化を試みた。
今回使用した植物は、前回製作したパルダリウム水槽で生育良好であった、ラン科植物を中心にカシノキランやオキナワセッコク(写真-6右)、ツルカタヒバなど沖縄在来植物14種を大型水槽内に配置した。また、小型ガラス容器を使い、オリヅルスミレ(写真-6左)、オオシロショウジョウバカマ、コケタンポポなどの希少植物も展示した。
今回製作したパルダリウム水槽は、通気、光量、植栽桝などに改良を加えたことから、この改良による植物の生育状態や美観の維持については、今後も継続して経過観察を続けていく必要がある。また今回は、大型水槽だけでなく、小型ガラス容器による希少種の展示も追加することで、より貴重な希少種など、展示できる植物種数を増やすことが出来た。このように、大小さまざまなパルダリウム水槽を用いることで、室内空間で生植物を使用した装飾展示ができる利点がある。今後も展示できる植物種数を増やすとともに、イモリなどの生き物展示も行い、やんばるの植物や生き物を学べる学習エリアとして、やんばるギャラリーの利用を進めていきたい。
公園管理に関しては総合学習エリアの改修など、目標を上回る達成状況と思われる。(三井顧問:千葉大学 名誉教授)
新しい展示手法及び栽培手法、展示効果の向上に繋がる実際的な試みであり、評価できる。より展示の拡充に期待したい。(池田顧問:琉球大学 名誉教授)
*1植物研究室
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