亜熱帯性植物の調査研究
日本の各地にはその地域特有の野菜類、通称”伝統野菜”(別称;在来野菜、など)と呼ばれるカテゴリーの農産物が存在する。しかし機能性と関連してこれに的を絞った全国的規模の調査・報告事例はほとんど見られない。これらのことを踏まえて、今日必ずしも十分に利活用されているとも言い難い各地の伝統野菜に着目し、先ずは基礎的データの収集・分析を企図した。日本全国各地の伝統野菜について全数調査を行い、これを科ごとに分類し、分布地域などの現状を把握することとした。 併せて、既届出の機能性表示食品について、都道府県ごとの商品開発状況や一部については加工食品に配合されている機能性関与成分の由来等についても調査した。
都道府県等が中心となって取り組んでいる地域特産の野菜、いわゆる「伝統野菜」について、全数を把握し、分類を行うことを目的にWeb検索を行い、検索でヒットしたすべての野菜について一品目ごとに“科”を同定した。本邦に存在する伝統野菜は28科に分類され、総数は958品目に及ぶことが分かった。科の内訳をみると、最も多かったのはアブラナ科で288品目、次いでウリ科の140品目、ナス科の123品目、ユリ科の94品目、マメ科の76品目と続いた。全28科のうちヤマノイモ科以下計18の科では品目数は10以下となっており、さらにそのなかで一品目だけというのがパパイヤ科以下計4科もあった。
平成23年の制度施行から6年が経過した現時点での都道府県単位の商品総数を把握するために、消費者庁ホームページの「機能性表示食品の検索」という専用サイトから、都道府県別に商品総数と生鮮食品数(一部については機能性関与成分名)の2項目を抽出した。
伝統野菜としてリストアップされた総数958の全品目を科に分類した上で、それぞれの科に属する品目数を都道府県ごとに示した。地域ごとに品目数の多寡をみると、山形県が86でトップ、長野県の78,東京都の49がこれに続いた。鳥取県はもともと伝統野菜品目の少ない地域だが、47都道府県の中で本県だけがアブラナ科の品目がゼロであった。一方で、一つの地域に1科1品目だけという野菜が4品目存在した。日本全国で単一県でのみ伝統野菜として取り扱いされている4品目とは、パパイヤ(パパイヤ科:沖縄県)、来迎寺そば(タデ科:山形県)、じゅんさい(スイレン科:秋田県)及びもろへいや(シナノキ科:山梨県)であった。沖縄県の伝統野菜を含めて、全国の伝統野菜等と既届出機能性表示食品との関連性などの詳細については今後調査を行って報告したい。
全国のメーカー等から消費者庁に届出のあった機能性表示食品について、消費者庁ホームページ(令和3年2月24日更新)で確認できる商品届出総数数は3780点であった。内訳は東京が1550点で1位、次いで大阪560点、福岡273点、愛知192点、静岡186点、兵庫110点と続き、この6都県で2871点、全体の76%を占めた。沖縄県は17件、全体の0.4%であった。加工食品に含まれている機能性関与成分を調べたところ、利用頻度が最も高い成分、すなわち数多くの種類の加工食品に配合されている成分の上位は1位GABA(γ-アミノ酪酸:386件)、2位難消化性デキストリン(373件)であった。
一方生鮮食品においては、商品総数は102点にとどまり、機能性表示食品全体の3%弱であった。これも東京が27点で1位、静岡16点、岐阜11点、和歌山10点で二桁はこの4都県にとどまった。
今後、沖縄の地域産業の振興面での波及効果の期待、あるいは加工食品の原材料としての生産拡大などの可能性も考えられる。機能性関与成分の含有量次第という課題付ではあるが、日本各地の伝統野菜の中から同様な機能性表示生鮮食品が今後次々と商品化されることが期待される。
今後、機能性表示食品等に関するさらなる文献調査や市場調査の動向等を踏まえた上で、機能性表示食品等の展望に触れつつ、最終的には近い将来において、関連食品の商品開発が行えるように持っていければと考えている。すなわち、昨年度から当植物研究室メンバーが全島的に行脚して収集し、試験栽培などを進めている沖縄の伝統野菜等について、当財団施設内において自家栽培した品目を用い、機能性表示食品(主に加工食品)や栄養機能食品の商品開発を行うことを目途として、予備検討などを含めてその具現化について必要と思われる方策を可能なところから準備していきたい。
*1植物研究室
Copyright (c) 2015 Okinawa Churashima Foundation. All right reserved.