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  1. 6)沖縄における有用植物(島野菜等)の遺伝資源収集および在来葉菜類に関する聞き取り調査
沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

亜熱帯性植物の調査研究

6)沖縄における有用植物(島野菜等)の遺伝資源収集および在来葉菜類に関する聞き取り調査

野原敏次*1・砂川春樹*1・佐藤裕之*1・高江洲賢文*1

1.はじめに

沖縄県の健康長寿を支える要因のうち、工芸品を利用した生活様式や、伝統的に用いられる島野菜等の有用植物があげられる。後者については、それらの機能性の健康長寿への関与が示唆されている。しかし、食の欧米化などでこれら有用植物の利用は減少し、多くの島野菜は喪失の危機にある。そのため、沖縄県は島野菜として28種を定め、その利活用を促進し、生産振興を推進しているが、広く普及されるまでには至っていない。すなわち、遺伝資源の収集保存および栽培状況調査は本島全域における喫緊の課題である。この課題を解決するため、今年度は、島野菜等の遺伝資源収集活動および葉菜類に関する聞取り等の現地調査を行った。

2.収集および調査方法

1)遺伝資源収集

2020年4月から2021年3月の期間で遺伝資源の収集を行い、夏季の主な対象地域を沖縄本島中南部、冬季を本島北部とした(図-1)。

2)葉菜類の聞取り調査

キク科で茎チシャ(葉菜)の類とされるメーオーパについて、株の由来を確認するため、八重瀬町の種苗店で販売されていたメーオーパ株などについて、聞き取り調査を行い、系統の由来となる産地の推定を試みた。さらに、今帰仁村内でアブラナ科の一種であるインリーデークニについても現状を把握するために聞き取り調査を行った。

3.収集および調査結果

1)遺伝資源収集結果

沖縄本島における遺伝資源として、24品目が収集され、そのうち島野菜は11品目であった(表-1)。これらは有用植物(島野菜等)の遺伝資源として種子や株を保存するとともに、系統間差を比較する選抜試験や機能性成分分析等に供する予定である。

2)葉菜類の聞取り調査結果

戦前に栽培されていたメーオーパは、主にアタイグワァーなど各家庭で栽培される作物であった。戦後から現代にかけ、栽培する家庭はほぼなくなり、自生する株なども消滅したと考えられていた。しかし、一個人が鉢で保管していたメーオーパ株をもとに種子が増殖され、消滅は回避、元の産地である今帰仁村へ種子が還元された。この種子を作ったメーオーパ株の大元について聞き取り調査を行ったところ、本部町の伊豆味である可能性が示唆された。ここでは、これを本部町系統と呼称する。これとは別に、北部農林高等学校が中心となり北部地域でメーオーパの普及に努めている。このメーオーパ株は、今帰仁村で畜産業を営む方から譲り受けており、これを仮に今帰仁村系統と呼称するが、聞取りおよび現地調査では産地を推定するまでの情報は得られなかった。一方、八重瀬町の種苗店でメーオーパ株が販売されており、これは今帰仁系統であると考えていた。しかし、種苗店関係者への聞取り調査から、北部地域由来との情報は得られたが、その大元の由来が不明であった。以降、北部地域の現地調査でこのメーオーパ株について、栽培経験など様々な情報の聞取りを行った。結果として、東村の農家と八重瀬町の種苗店関係者が旧知の友人で、農家よりメーオーパ種子が分譲され、これを種苗店関係者が販売用に栽培していたことが判明した。この農家が分譲した種子からのメーオーパ株を東村系統(写真-1)と呼称する。今後、各系統の形態比較などの特性調査を行い、さらに、本島全域を調査し他の系統が存在するのか詳細な調査が必要である。これをもとに、沖縄本島内におけるメーオーパの系統を明らかにすることは重要課題に位置づけされると考える。

3)インリーデークニの聞き取り調査結果

今年度、インリーデークニは今帰仁村渡喜仁の畑で2名が栽培し、同越地の野菜畑1カ所で自生が確認された。栽培者が昨年より1名増えたものの、1名は高齢者で翌年から栽培できなくなる可能性もある。また、自生の畑も生育面積が減少しており、依然として危機的状況は続いている。方言名は、インリーデークニであり、デークニ=ダイコンとダイコンの名称が使われているが、アブラナ科アブラナ属のカブの仲間とされ、肥大根系統とゴボウ根系統が混生している。また、根生葉の葉面にはダイコンのような毛耳はなく、葉野菜としても重宝される。今後を鑑み、早急な保全対策が必要な品目である。

4.外部評価委員会コメント

有用植物の探索と保存は極めて重要で、今後も継続して調査を進展させて成果をあげていただきたい。ただ、従来の方法(収集)だけでなく、新たな着眼点(例:植物周辺の有益微生物の収集等)も加えて調査を進めていただきたい。栽培が難しかった有用作物の産業的利用の道が開かれると思われる。(石井顧問:徳山高等工業専門学校 研究員)

遺伝資源の収集は成果が出ており、これらの保存栽培が大変になってきていると思われるので、工夫が必要であろう。収集品の特性調査は、特性の利用・活用方法の提案が重要である。注目されている植物の保存方法を検討してみることも意義深いと思われる。(佐竹顧問:昭和薬科大学薬用植物園 研究員)

  • 図-1 有用植物の遺伝資源収集対象地域(橙色)
    図-1 有用植物の遺伝資源収集対象地域(橙色)
  • 写真-2 東村由来メーオーパの露地栽培
    写真-2 東村由来メーオーパの露地栽培

表-1 収集された遺伝資源としての有用植物

科名 学名 品目名
アブラナ科 Brassica rapa L. ssp.  インリーデークニ
  Brassica juncea L. シマナー
  Brassica juncea L. var. Caltiver ssp アカナー
イネ科 Panicum miliaceum L. キビ
ウリ科 Cucumis melo L. var. utilissimus (Roxb.) Duthie et Fuller 'Albus' シロウリ
  Cucumis sativus 'Akageuri' アカゲウリ
  Cucurbita moschata Duchesne 島カボチャ
キク科 Artemisia morrisonensis Hayata リュウキュウヨモギ
  Gynura bicolor (Roxb. ex Willd.) DC. ハンダマ
  Luffa acutangula (L.) Roxb. ヘチマ
クズウコン科 Maranta arundinacea L. クズウコン
クスノキ科 Cinnamomum sieboldii Meisn. カラキ
サトイモ科 Colocasia gigantea (Blume) Hook.f. ズイキ
シソ科 Perilla frutescens (L.) Britton var. crispa (Benth.)
W.Deane f. purpurea (Makino) Makino
シソ
ワスレグサ科 Hemerocallis fulva L. クワンソウ
スベリヒユ科 Portulaca oleracea L. スベリヒユ
セリ科 Glehnia littoralis F.Schmidt ex Miq. ハマゴボウ
ナス科 Capsicum frutescens L. 島トウガラシ
ヒガンバナ科 Allium x wakegi Araki ワケギ
  Allium macrostemon Bunge ノビル
  Allium chinense G.Don 島ラッキョウ
ヒユ科 Beta vulgaris L. var. cicla L. フダンソウ
ヒルガオ科 Ipomoea aquatica Forssk. エンサイ
マメ科 Glycine max (L.) Merrill 島ダイズ
品目名で方言名等の地域の呼名があるものはそれを示した。
 

*1植物研究室

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