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  1. 4)希少植物の生息域外保全に関する調査研究
沖縄美ら島財団総合研究センター[美ら島研究センター]

亜熱帯性植物の調査研究

4)希少植物の生息域外保全に関する調査研究

佐藤裕之*1・天野正晴*1・徳原 憲*1・具志堅江梨子*1・阿部篤志*1

1.はじめに

日本全国の希少植物の生息域外保全は、(公社) 日本植物園協会の主導の下、各地にある植物園協会加盟園で進められている。この中で当財団は、植物園協会の種子保全拠点園として「種子保存に関する検討業務」を担い、特に超低温保存に関する業務を請け負っている。
さらに環境省生物多様性推進支援事業として、「沖縄県内に生育する国内希少野生動植物種の生息域外保全事業」が令和元年12月に採択され、令和3年度末まで計画している。本事業は、沖縄県内に生育する国内希少野生動植物種を対象とし、自生地調査、種子収集、種子保存、発芽試験、栽培方法の検討を行うものである。
また、自主事業としても、「沖縄県内に生育する希少植物の生息域外保全」を進めており、栽培(培養)、種子保存に係る技術開発を行い、生息域外保全を実施している。
沖縄県をはじめ日本の希少植物を取り巻く環境は依然厳しい状況であるが、生息域外保全を推進し、生物多様性を守るこれら3つの取り組みのうち、主要な部分について報告する。

2.種子保存に関する検討業務

写真-1
写真-1 ホソバフジボグサの発芽試験実施状況。
左から25℃、4℃、-20℃、
超低温で1か月間保存した種子の播種後10日の様子

当財団が独自に採種、または関係機関から送付されてきた110種185サンプルの種子・胞子および花粉を対象に、乾燥法による超低温保存による試行に供した。さらに超低温保存の有効性を立証するため、絶滅危惧植物等5種 (タヌキアヤメ、タイワンルリソウ、ホソバフジボグサ、オリヅルスミレ、ダイサギソウ) について発芽試験を実施した(写真-1)。その結果、5種ともに保存後も発芽が確認された。今後は絶滅危惧植物の数が多く、かつ、種子保存特性が不明な種が多く含まれるラン科とウマノスズクサ科カンアオイ属を重点的に調査する予定である。

3.沖縄県内に生育する国内希少野生動植物種の生息域外保全事業

写真-2
写真-2 ヨナグニイソノギクの生息域外保全株の様子
写真-3
写真-3 ホソバフジボグサの発芽育成試験の様子

沖縄県内に生育する国内希少野生動植物種の生息域外保全に向け、オキナワテンナンショウ、ヨナクニトキホコリ、ヨナグニイソノギク、リュウキュウキンモウワラビ、ハカマウラボシの5種について、種子採集、種子保存、栽培技術の構築を試みた。
上記5種について現地調査を実施、野外での生育状況の確認、種子採集を試みた結果、ヨナクニトキホコリ、ハカマウラボシを除く3種について、野生株から種子が採集できた。また、ハカマウラボシについて、栽培株から胞子が採集できた。オキナワテンナンショウとヨナグニイソノギクについては、播種・栽培による生息域外保全を実施した。その結果、オキナワテンナンショウは10株、ヨナグニイソノギクは25株の域外保全株の獲得に成功した(写真-2)。また、栽培に関する基本的な知見を得た。リュウキュウキンモウワラビ、ハカマウラボシについては、胞子の超低温保存を実施した。今後は、過年度までに得られた知見をまとめ、生息域外保全に向けた栽培マニュアルの作成を行う。

4.沖縄県内に生育する希少植物の生息域外保全(自主事業)

令和2年度は絶滅危惧植物等6種(ホソバフジボグサ、ホザキザクラ、カントラノオ、カシノキラン、ヤブミョウガラン、エダウチヤガラ)について、栽培(培養)、種子保存技術の構築を試みた。国内希少野生動植物種の一つであるホソバフジボグサについては、発芽育成における種子処理、気温、用土の影響を調査し(写真-3)、その成果を論文として公表した。また、環境省事業の一環として実施された「ホソバフジボグサ保全連絡会議」に専門家として参加し、宮古島市における保全活動の取り組みを支援した。ホザキザクラとカントラノオは海洋博公園における普及活動を目的に、得られた栽培に関する知見を活かし展示株の仕立てを行った。

5.外部評価委員会コメント

沖縄の希少植物の扱いは非常に良くなされていると思う。普及の為、沖縄の希少種の記事を新聞に出したらどうか。(小山顧問:高知県立牧野植物園 顧問)。
環境保全に関しては外部研究機関と連携し、希少植物の保護保全に関する当初の研究目的を着実に実行し、日本植物園協会の栽培技術賞を受賞するなど、目標以上の成果が得られていると思われる。(三位顧問:千葉大学 名誉教授)。


*1植物研究室

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