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  1. 4)調査受託業務
沖縄美ら島財団総合研究所

琉球文化の調査研究

4)調査受託業務

安里成哉*1・田丸尚美*1

1.はじめに

琉球文化財研究室では、沖縄県立博物館・美術館、伊是名村、沖縄県より文化財の修理・復元、普及・保存・継承に関する3件の業務を受託した。

2. 沖縄県立博物館・美術館:「琉球王国文化遺産集積・再興事業製作業務」

1)業務内容

本業務は沖縄県立博物館・美術館より、当財団と株式会社国建の共同企業体で業務を受託した。
本業務は、近代化や戦争などによって亡失、もしくは琉球王国時代から継承されてきた有形・無形の文化遺産に関わる学術的知見や科学分析等の情報集積することを目的としている。加えて、これら文化遺産の8つの手わざ(絵画・木彫・石彫・漆芸・陶芸・染織・金工・三線)を現代の最高水準の手わざで復元を行う。さらに王国文化の発信によりブランディングを確立し沖縄県の文化観光資源に資することを目的としている。令和2年度は3分野5件の復元製作を行った。令和2年度で平成28年度続いた製作を全て終えた。
また今年度から令和3年度に発行予定の事業報告書の執筆を行い、分野の執筆担当は製作監理者が引き続き行った。担当者は木彫・安里成哉、染織・宮城奈々、陶芸・鶴田大(以上総合研究センター琉球文化財研究室所属)、絵画・輝広志、三線・宇保朝輝(以上首里城公園管理部 広報企画展示係所属)が行った。

2)復元製作概要

(1)木彫
「円覚寺仁王像」「漆巴紋牡丹沈金透彫足付盆」「聖観音像」の3件製作を行った。
(2)漆芸
「黒漆雲龍螺鈿東道盆」の製作を行った。
(3)三線
「東博蛇皮線」の製作を行った。

3. 伊是名村:「銘苅家・名嘉家旧蔵品修復復元業務」

1)業務内容

本業務は、琉球国王尚円の出身地である伊是名村に所在する伝承文化財の調査を行い、文化財の状態を確認し保存修復を行う。現在でも祭祀儀礼等で使用されている資料については複製を製作、原資料は適切に保管しつつ、伝統的祭祀儀礼の実施には支障の無いようにするための事業である。原資料として保存措置を行った文化財に関しては、資料館での展示公開・島外での伊是名村及び地域の文化財の紹介等の取り組みに活用し、現在に伝来する伊是名村の琉球王国時代の特異な文化財をPRして観光振興に寄与することも目的とする。
令和2年度は漆芸・古文書・金工の3分野で修理、複製製作を行った。修理が完了した原資料に対しては撮影を行い、古文書については有識者を招聘し資料評価を実施した。

2)修理・複製製作概要

(1)漆芸
4件の修理・複製製作を行った。修理は現状保存修理を原則として行った。修理及び複製製作は琉球漆工藝舎に依頼した。
(2)古文書 9件の修復を行った。本紙の欠失虫害欠損箇所に同質の紙で補修を施すなどの修復を行った。修復は石川堂に依頼した。
(3)金工
1件の修理を行った。修理は現状保存修理を原則とし、劣化を防止する補修等を行った。修理は京都府の公益財団法人美術院に依頼した。

4. 沖縄県文化振興課:「令和2年度沖縄食文化保存・普及・継承事業」

1)業務の目的・内容

本業務は沖縄県文化観光スポーツ部文化振興課より、丸正印刷株式会社と当財団の共同企業体で業務を受託した。
沖縄県では平成28年度に策定した「沖縄の伝統的な食文化の普及推進計画(沖縄食文化創生プロジェクト)」において、伝統的な食文化を食育等様々な関連する取組と連携し、保存・普及・継承を推進している。
令和2年度は共同企業体内で業務を分担し、当財団は伝統的な食文化の情報をデータベース化する業務を担当した。沖縄の伝統的な食文化の保存・普及を促進するため、情報収集・原稿作成と同時に方針の再調整を行った。

2)実施概要

(1)今年度の主な作業内容
ア)情報の優先順位・範囲の設定
イ)食文化に関わる情報や資料の収集・整理
ウ)データベースへ掲載する原稿の一部作成
エ)ワーキングチームの設置・運営及びヒアリングの実施
(2)ワーキングチームの設置・運営及びヒアリングの実施
業務推進に伴い、沖縄の伝統的な食文化やその関連情報について専門的な知識を持つ委員を招聘し、内容・構成等について検討及び策定するワーキングを設けた。
ワーキングチームは食文化・歴史・民俗の分野から選出した委員で構成され、各分野の観点から協議・検討する役割を担った。
また、専門的な内容について提言を受けるため、感染症拡大防止を鑑み委員個別のヒアリングを実施し、確認・検討を行った。

5. 外部評価委員会コメント

・沖縄県立博物館・美術館発注「琉球王国文化遺産集積・再興事業製作業務」について、財団の蓄積や人材を発揮できる重要な事業であり、今後の方向性が示された。(高良顧問:琉球大学名誉教授)。
・伊是名村発注「銘苅家・名嘉家旧蔵品修復復元業務」について、財団の蓄積を発揮して、地域貢献を実践した重要な事業である。(高良顧問)。
・沖縄県文化振興課発注「令和2年度 沖縄食文化保存・普及・継承事業」について、琉球食文化の調査研究に連動する重要な基礎的事業である。(高良顧問)。
・食文化に関する情報のデーターベース化にあたって食材の原稿作成では動物研究室、植物研究室、魚類課の研究成果が反映されることを期待する。(西大顧問:フィニシングスクール西大学院 学院長)。
・沖縄県文化振興課の別途委託事業(食文化の普及・継承事業)への継続参加を望む。(安次富顧問:安次富順子食文化研究所 所長)。


*1琉球文化財研究室

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