海洋文化の調査研究
本事業では令和元年度に引き続き、海洋文化館の展示・収蔵資料の取扱い・点検・管理方法を確立するために、展示・収蔵資料の状態調査を行うとともに、既存の資料リストの内容について精査し、その校訂を行った。
本調査の目的は、海洋文化館の資料を適切に管理・保存することにより、同館の安定的な運用を保証し、かつ研究施設としての財団の実績を蓄積して、資料の管理保存に関する役割を確立することにある。また、同技術を資源化することによって、将来の事業化も期待できる。
今年度は海洋文化館内の巡視温湿度記録簿、巡視資料状況記録簿等の情報を活用し、館内および収蔵庫内の温湿度変化等、環境調査を行い、資料の管理状況を把握する体制を整備した(表-1)。また、管理対象外の物品を整理・処分し、資料の保存状況を改善した。さらに昨年度からの継続調査として、海洋文化館内および収蔵庫に保管されている資料の状態調査を実施し、資料リストへの情報追記・修正を行った(写真1、2)。
なお、展示・収蔵状況の改善のために、今年度は以下の対策を行った。
・夏季における館内空調の24時間稼働試験
・過去にカビが発生した資料周辺の除湿剤設置
・同所への送風機ならびに除湿器の設置
以上について、国営部など財団内の関係部署と協力して対応するとともに調査を継続し、基礎データの作成・蓄積に努めるとともに、実用的な管理マニュアルの策定と実践を目指す。
本調査は、既存の海洋文化館所蔵資料データベースを精査し、同館の展示リニューアル作業やその前後の資料の移動などに起因する齟齬を解消するとともに、資料ごとの解説文の粗密の平準化や法量等重複する情報の整理を行って、より信頼度が高くコンパクトな資料リストの作成を目的とするものである。
今年度は令和2年度までに作成した資料データベース第4稿をもとに、資料リスト中、複数の書式が混在する「法量」に関する書式を統一し、更新した(表-2)。
今後は昨年度に引き続き重複する情報の整理と解説文の平準化という二つの作業を行う予定である。また、作業の各段階においては、リニューアル作業時の監修者等、外部有識者の協力も得て、同リストの完成度を継続的に高めていく。
地道に資料調査は続けられているようで評価したい。ただしアドバイザーにその現状があまり伝わっていなかったように思われる。より綿密なやりとりのために、オンラインなどでアドバイザーが一同に会し、意見交換会を行っていただきたい。(後藤顧問:南山大学 教授)。
海洋文化館資料について年2回の状態調査、展示場および収蔵庫の室温度や環境調査、さらに保存状態の悉皆調査や修復などを行い、資料の保全に努めている。貴重な資料の保存には、保存科学の手法が不可欠である。
正確かつ詳細な資料のデータベースの作成とその一般公開が海洋文化館の大きなミッションのひとつである。データベースの4稿の作成を進めて、近未来に図録が作成されることを待望する。(須藤顧問:堺市博物館 館長)。
表-1 令和2年度調査表(展示室内のコーナー別温湿度変化をグラフ化している)
表-2 資料リスト第4稿(赤枠部分が書式統一作業中の箇所「法量」)
*1普及開発課
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