普及啓発の取り組み
学校教育と連携した普及啓発事業の確立は、そこに通う児童生徒の環境保全意識の向上を図る上で重要な要素の一つである。当財団では、沖縄県内の児童生徒の地域環境への興味関心や環境保全への意識向上を図るため、平成26年度よりやんばる環境学習を展開している。
本事業では、県内北部地域の小学校や教育委員会等と連携し年に3回以上の学習を継続する「通年学習プログラム」および1~2回完結型の「短期学習プログラム(出前授業)」を、県内各地の学校を対象に展開した。
名護市内4校、本部町内1校において通年学習を展開した。主に総合的学習の時間を利用して行い、適宜、社会・理科・国語などの単元にも組み込んだ。地域の水生生物や沖縄の自然について、当センター職員による解説や野外活動等を通した学習を行った。令和2年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、センターおよび各学校のガイドラインに沿って実施した。
(1)ウミガメから学ぶ環境学習
ア)名護市立小中一貫教育校 緑風学園
平成26年度に連携を開始した緑風学園では、3年生から7年生(中学1年)までの5学年を対象とした複数学年にわたる学習体制が確立している。学習は令和2年5月~令和3年3月にかけて行い、実施場所は緑風学園内施設、美ら島自然学校、学区内の河川や海岸等であった。学習は、3年生の「ウミガメ」をきっかけとし、4年で「川の生き物と環境」、5年「地域の食」、6年「イノーの生き物」、7年「地域の良さ再発見(調査)」と変化し、地域の環境や文化を体系的に学ぶことを意識した学習展開を行った。実施にあたり、学校、地域自治体や住民、近隣のNPO等と連携した。学習の主体が学校側に移行しつつあり、年間の進行管理を地域コーディネーターが行い、当センター職員は全体のアドバイザーとして、随時、情報共有や協力内容の確認を行った。
3月には口頭およびポスターでの発表を行った。3年生はウミガメの生態や飼育について、本部町内小学校と合同でウミガメ館にポスター掲示したほか、4年生は淡水生物の解説パネルを作成し、美ら島自然学校への掲示で成果発表とした。また、新たな取り組みとして、学習の最終学年となる7年生の口頭発表を今年度より審査方式とし、第三者による評価を加えることで生徒のまとめる力および発信力向上を図った。
3、4年生を対象に、「イノーの生き物」や「ウミガメ」をテーマに学習を実施した。名護小学校では、1学期にイノーの生き物、2学期にウミガメを題材とした。センター職員が講師としてイノーの生き物や危険な生き物について解説した後、本部町備瀬区でのイノー観察会を実施予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響をうけて中止となった。ウミガメの学習では、「ウミガメの生態や形態」「ウミガメをとりまく環境」について講義した他、ウミガメ生体を用いた形態観察を行った。稲田小学校では、国語科の授業と絡めながら、ウミガメの生態や環境問題について計3回学習した後、地域海岸での海岸清掃を行った。
ウ)本部町立上本部学園
海洋博公園を活用した複数学年にわたる通年学習として事業を開始した。対象学年は小学4、5年と中学3年生とした(新型コロナウイルス感染症拡大に伴う授業計画変更により、令和2年度のみ中学2年で実施)。学習は令和2年7月~令和3年2月にかけて行い、実施場所は上本部学園内施設、海洋博公園内施設(海洋文化館、おきなわ郷土村、おもろ植物園、オキちゃん劇場、ウミガメ館、マナティー館、熱帯ドリームセンター)とした。学習構成は、既に海獣課と連携して実施している3年生の「ウミガメから学ぶ環境学習」をきっかけとし、海から川、人の暮らしと連動させることを意識づけした。各学年のテーマは、4年「地域の農業と自然」、5年「河川の生き物と環境」、中学3年「地域の情報発信」とし、将来的には小学3年~中学2年で体験した経験を活かして中学3年で記事を作成し、外部へ発信することを目標とした。実施にあたり、海洋博公園内各施設の担当課および総合研究センター各課室の職員と連携し、事前学習や現地での体験活動、インタビュー対応を行った。
(2)川の生き物教室
平成25年度より名護市立真喜屋小学校と連携して河川の環境学習を行っている。今年度も引き続き、小学校4年生を対象に年2回の学習会を行った。淡水魚に詳しい職員を講師として派遣し「沖縄の河川生態系について(概説)」、「地元のリュウキュウアユについて」について授業を行った後、野外学習として源河川での観察会を行った。
地域の環境や動植物および文化に対する興味関心を引き出すことを目的に、1~2回完結型の短期学習プログラムを、県内の小中学校および高等学校を対象に実施した。実施にあたっては、総合的学習の時間の他、国語や理科、社会の単元授業と関連づけた内容で構成した。
令和2年度は県内17校から19件の依頼を受け実施した。学習テーマは「ウミガメ」「サンゴ」「有孔虫」「漂着物」等で、依頼内容に応じて総合研究センター職員を講師として派遣した。
本事業は、学習プログラムの開発を兼ねており、各学校で行った事業の効果や手法の検討を進めている。年度末には、緑風学園における学習効果の検討を目的に、在校生・卒業生を対象としたアンケートおよび聞き取り調査を実施し、結果を分析中である。また、水族館におけるウミガメを題材とした活動事例として、機関紙へ報告を投稿するなど、広く周知を図った。また、各学校の取り組みに関連したテーマとして「希少淡水魚の域外保全」「琉球食文化」「地域の伝統行事」について学習を取り入れ、総合研究センター各課室の協力により授業を行った。センターの研究成果を活かした事業展開を図り、今後の教材開発に繋げたい。
過年度、当センターが製作した教材をもとに竹富町の海洋教育副読本の一項目が編集されるなど、既存教材の教育現場での活用がひろがっている。今後も調査研究成果を活かして魅力ある学習プログラムや教材開発を進め、利用促進を図る。
沖縄で最も大切なことは地域資源の開発と文化の伝承である。本土との均一化が進む中、沖縄人が歩んでいくべき道を考え始めてもいいだろう。(亀崎顧問:岡山理科大学 教授)。
*1普及開発課 *2動物研究室
Copyright (c) 2015 Okinawa Churashima Foundation. All right reserved.