海洋文化の調査研究
本事業では地域と連携して南西諸島の海にまつわる民俗に関する基盤的な調査研究を行うことを目的に、1)船漕ぎ儀礼の現況・変容、2)海を中心とした自然利用の民俗誌という2テーマについて、文献・現地調査を行った。今年度は、船に加えて来訪神儀礼についても調査を行った。(表-1)
南城市奥武島ではユッカヌヒーのハーリーについて調査したほか、国頭村安田や渡名喜村渡名喜島、名護市汀間ではシヌグやシマノーシ、ジュウグヤの行事の際に神を海へ送る儀礼について調査を実施、他地域との比較を行った。また、名護市嘉陽ではアブシバレーの船流し儀礼、宮古島の島尻や安部ではそれぞれパーントゥやウニホーガナシと呼ばれる来訪神についてそれぞれ調査を実施(写真-1、2、3)、その成果を論文化すべく文献資料との比較検討を行った。また、久高島の八月マッティで行われる儀礼的な漁撈について調査を行い、民俗学的データのみならず、魚類の分布状況を示す生物学的資料も収集した。
名護市嘉陽、安部で2回、現地調査と並行してガイドツアーを実施し、ツアー用テキスト2点を作成した。写真・動画等の調査記録を当該地域の公民館等に提供し、安部区事務所では地域の伝統行事に関する講演を行った。船漕ぎ儀礼について、沖縄民俗学会に投稿した(令和2年2月現在審査中)。調査成果は海洋文化講座での教材作成に活用した。調査時に得たネットワークを「琉球弧アダンサミット」への沖縄本島内の工芸・料理技術者の招聘に活用した(写真-4、5、6)。
南西諸島の海洋文化について多方面からの調査を行い、成果を上げている。また講演やマスコミへの情宣も計られており評価できる(後藤顧問:南山大学 教授)。
地域に根差した調査研究手法の開拓、他機関との共同調査の成果を共有したり、「琉球弧アダンサミット」においては調査時に形成したネットワークによって島内の工芸・料理技術者を招聘するなど、広く応用的な研究展開を見せている点は評価される(須藤顧問:堺市博物館 館長)。
表-1 現地調査 実施箇所一覧
*1普及開発課
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