普及啓発の取り組み
当財団では、亜熱帯性動植物に関する調査研究や国営公園の管理をする中で蓄積されたノウハウ、研究成果等を社会に広く発信し、多くの方々に亜熱帯性動植物に関する学習の機会を提供する普及啓発事業として、子どもから大人までを対象にした各種教室等を実施している。平成31年度は主に「美ら島自然学校」を会場に、一般市民や親子を対象にした「美ら海自然教室」、「美ら島自然教室」、「美ら島・美ら海こども工作室」等の学習会を開催した。海洋博公園等の外部施設で実施分も併せ、以下に報告する。
美ら海自然教室では、海の自然環境の不思議や面白さを伝えることを目的に、室内実験や野外観察などの体験を通した学習を行った。
平成31年度は「ウミガメと砂浜」、「漂着物を見てみよう」、「東海岸のイノー観察」、「西海岸のイノー観察」、「海藻のふしぎ」、「自分だけの標本箱」、「サンゴ礁の磯観察」の5事業を開催し、72名の参加があった。
その中でも親子を対象とした「海藻と海草を観察しよう」では、参加者から「生活で使う多くの物に海藻の成分が使われているのは初めて知りました。「海藻について多く知ることができた。」などの感想があり、潮間帯など浅瀬の海岸で見かける海藻について生体観察を通して沖縄の海の生き物への理解を深めたことがうかがえた(写真-1)。
また、美ら島自然学校前の海岸(沖縄本島東側)と本部町の備瀬崎(西側)の両方で観察を実施し、両地域を比較することで、東側は西側と比較してサンゴ礁が発達していない事や海藻類の種類が豊富であるといった違いを観察することが出来た。
美ら島自然教室は、主に親子を対象とし、沖縄の植物や自然環境についての不思議や面白さを、野外観察と標本観察を中心に学習した。
平成31年度は「海岸の植物観察」と「危険な生き物を見てみよう」の2事業を開催し、32名の参加があった。「海岸の植物観察」では、美ら島自然学校前の海岸で見られる海浜植物と漂着種子を実際に観察し、形態や生態、また種子散布と植物の生き残り戦略について講師が解説した。「危険な生き物を見てみよう」では、夏休みの初めに海の危険生物について知ってもらうため、標本とスライドを中心にその危険性と身を守るための服装について学習会を行った。
参加者からは「初めて知ったことがたくさんあった。」「もっと植物の調査をしたくなった。」といった意見をいただくなど、身近な環境に興味・関心を持っていただく機会を提供できた。
美ら島・美ら海こども工作室は、主に親子を対象とし、沖縄で採集できる、動物や植物由来の材料・日常生活用品の廃材等を用いて、様々な玩具等を工作する事業である。作製過程で動植物や自然環境の豊かさと活用法を学び、創造性を養うことを目的としている。
平成31年度は、「季節の草木の工作と草木遊び」(全4回)、「元旦!こども凧カーブヤーをつくろう」の5事業を開催し、75名の参加があった。
昨年度より継続している、「季節の草木の工作と草木遊び」(写真-2)では、春「イグサ」、夏「アダン」、秋「木の実」、冬「ススキ」を題材に、実施した。参加者からは、「工夫次第で色々なアレンジができるの楽しい」という工作することに関する感想の他、「身近にある植物で工作できた点がよかった」「植物の意外な使い道を知る機会になった」「自然の素材を使って道具を作ることで、昔の人の知恵を学ぶことができた」といった植物そのものや文化など、多分野への興味・関心に広がったという意見も多数寄せられた。
海洋文化館の利活用促進を目的に、対象を親子向け・初心者向けに広げた講座「美ら島文化教室」を実施した(「III-1-10海洋文化館の利活用促進にかかる事業」参照)。
第1回目となる平成31年度は、「おもしろ道具を探そう」と題して、展示資料の「素材」に焦点を充てた。素材についての情報の探し方として、「展示物の観察・壁面・キャプション」から探せることを紹介したのち、ワークシートを使いながら、道具の素材について考えるガイドツアーを行った。
実施後、展示物を一点一点観察している参加者が複数名見られたことから、海洋文化館資料を見ていく際の情報の集め方・資料の見方を紹介する機会の必要性がうかがえた。
主に小学生以上を対象として実施した。ティラジャー(和名:マガキガイ)をテーマにした学習会「てぃらじゃー博士への道」や、「棘皮動物を観察しよう」、や「イソアワモチ」、「海の星と空の星」「砂」、「有孔虫」「ウミガメの誕生」、「漂着物」、「サンゴ礁域の貝類」等をテーマに開催し、256名の参加があった。
その中でも「貝類」を題材にした「てぃらじゃー博士への道」では、沖縄では昔から親しまれているティラジャーに注目し、動きや生態を観察するなどの学習を行った。参加者からは「普段見慣れているマガキガイの目や口の動きなど初めて観察した。また観察をしてみたい」といった強い関心が伺えた。また「サンゴ礁域の貝類」では、身近で親しまれている貝類やサンゴ礁域でみられる貝類にどのような特徴があり、またどのような生息環境に生息するのか野外観察を行った(写真-3)。
また「有孔虫」については、実際に野外で採集し、自然学校内の教室で実体顕微鏡を用いて観察し特徴等を学んだ。このように、周囲の自然環境を活用したほか、実体顕微鏡等の設備を利用する等、美ら島自然学校の強みを生かした学習会を実施できた。
高校生以上を対象に、天然記念物講座「嘉陽層の褶曲」を開催した。本講座は、沖縄本島北部(東海岸)で見られる嘉陽層を中心に沖縄島の成り立ちや地形や地質にも言及し、国指定の天然記念物「嘉陽層の褶曲」の現地実習も行い学びを深めることを目的とした(写真‐4)。
国営公園管理部企画運営チーム、植物管理チームが主担当となり、海洋博公園内にて動植物に関する教室や工作室等を実施した。本教室の実施内容の企画や講師については、研究センターの職員が務めた。
また、8月3日、4日に沖縄コンベンションセンターで開催された「夏休みこども自由研究in沖縄コンベンションセンター2019」にて、企画広報課が主体となり、夏休みの自由研究のヒントを紹介した。主に小中学生を対象として、沖縄の動植物や首里城の歴史文化、海洋文化等に関するパネル展示解説や生態の展示解説を行った。また当日、テレビの生中継にて財団の活動等の紹介を行った。
今後も、当財団職員が中心となって講師を務めるほか、外部の専門家を講師として招聘するなどし、生き物の生態観察や実験、顕微鏡を使った観察や野外観察、工作などの体験を交えた各種教室を企画・実施する。また、親子でコミュニケーションを取りながら学べる親子向けの講座や、気づきのきっかけとなるような小学生以上の子ども向け講座など、参加者のニーズに合った内容を検討し、学びの機会を提供する。
多くの対象者に幅広いテーマで提供しており、その実績は確認できる。項目によっては参加者が少なく10名以内もあり、その理由や要因については検討が必要である(池田顧問:琉球大学 名誉教授)。
*1普及開発課
Copyright (c) 2015 Okinawa Churashima Foundation. All right reserved.