亜熱帯性植物の調査研究
日本全国の希少植物の生息域外保全は、(公社) 日本植物園協会の主導の下、各地にある植物園協会加盟園で進められている。この中で当財団は、植物園協会の種子保全拠点園として種子保存に関する検討業務を担い、特に超低温保存に関する業務を請け負っている。
自主事業としても、沖縄県内に自生する希少植物の生息域外保全を進めており、栽培、種子保存という2つの方法を用いて生息域外保全を実施している。さらに環境省生物多様性推進支援事業として、「沖縄県内に生育する国内希少野生動植物種の生息域外保全事業」が令和元年12月に採択され、令和3年度末まで計画している。本事業は、沖縄県内に生育する国内希少野生動植物種指定種を対象とし、自生地調査、種子収集、種子保存、発芽試験、栽培方法の検討を行うものである。
沖縄県をはじめ日本の希少植物を取り巻く環境は依然厳しい状況であるが、生息域外保全を推進し、生物多様性を守るこれら3つの取り組みのうち、種子保存に関する検討業務及び沖縄県内に生育する国内希少野生動植物種の生息域外保全事業の主要な部分について報告する。
植物園協会加盟園から種子の受入れを実施し、過年度から累計68種の種子 (胞子) について超低温保存を試行している。さらに超低温保存の有効性を立証するため、試行保存している3種 (サイヨウシャジン、トサカメオトラン、サガリラン) について発芽試験を実施した(写真-1)。その結果、3種ともに保存後も発芽が確認されたが、サイヨウシャジン、サガリランについては保存前と比べて発芽率が著しく低かった。種子の保存状態や発芽前処理などの検討を行い、種子保存特性を解明していく予定である。
県内の国内希少野生動植物種を対象に、生息域外保全を実施した。伊江島で野外調査行い、伊江島固有変種のイエジマチャセンシダの植物体、胞子を採集した(写真-2左)。植物体は水苔に植え付けし、胞子は乾燥後、寒天培地に播種した。播種後1ヵ月後には発芽が確認された(写真-2右)。また胞子の一部は、超低温保存を行った。なお、本事業での採集にあたり、環境省那覇奄美自然環境事務所へ国内希少野生動植物種捕獲等許可申請を行った。
日本に生育する希少植物の種子保存特性の解明のためには、発芽試験の複数種、複数回の実施が望まれる。さらに、保存する種数の増加に伴い、種子保存拠点園間での情報共有をはかることが課題となる。
採集した種の栽培方法や種子 (胞子) 保存方法の検討などはこれから実施予定である。また対象種の種子採集時期の特定及び採集を進め、県内に生育する国内希少野生動植物種5種の生息域外保全(種子及び植物体)の実施を行う。
特に稀少で絶滅が危惧されるラン科植物の保護は急を要する。保全技術の早急な確立が望まれる(唐澤顧問:ラン研究家)。
*1植物研究室
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