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  1. 2)首里城書院鎖之間展示検討業務
沖縄美ら島財団総合研究所

琉球文化の調査研究

2)首里城書院鎖之間展示検討業務

妹尾尚美*1

1. はじめに

本業務は首里城書院・鎖之間の展示を充実化し、首里城が王城として機能していた時期の姿を一部再現することを目的としている。また往時の書院・鎖之間の雰囲気が体感できる空間を演出することにより、首里城公園の来園者の満足度向上、施設への理解の深化に寄与する。
本業務を推進する上で、展示の根拠を検討するための調査・研究や当該施設についての蓄積を得ることが前提となる。そこで、今年度は文献資料をはじめとする関連資料に基づき、首里城書院・鎖之間の再現・展示の方針等について整理、検討した。

  • 写真-1 首里城公園 書院
    写真-1 首里城公園 書院
  • 写真-2 首里城公園 鎖之間の御床
    写真-2 首里城公園 鎖之間の御床

2.事業内容

1)施設概要

書院・鎖之間は首里城の中でも、国王や王子が活用していた重要な施設であった。現在の施設は平成20年に復元され、供用されている。

(1)書院
創建年は不明だが、遅くとも18世紀前半までには創建されていたとされている。
書院は主に国王が日常の政務を執る場所で、国王の書簡を起草する右筆らが詰めていた。中国や日本への御進物、国王が受ける献上物の取り扱い等も書院で行われた。また南殿同様、薩摩藩の役人を接待する場所でもあった。さらにいくつかの儀式もここで行われている。

(2)鎖之間
鎖之間も創建年は不明である。王子等の控所であり、また友人や薩摩藩の賓客を招き懇談する施設だったと言われている。

2)実施内容

(1)参考資料の検討
琉球の前近代の文献・絵図資料や参考事例の情報を収集し、往時の御床飾、座敷飾、調度品について検証した。 書院・鎖之間の室内装飾に関する重要な資料として、『御書院御物帳』、『御座御飾帳』、『御書院並南風御殿御床飾』(いずれも沖縄県立博物館・美術館所蔵)が挙げられる。これらの資料から、日常的な装飾や特別な儀礼(婚礼、薩摩役人の接待)での装飾について知ることができるため、施設ごとに内容を整理し一覧化した。また、森政三関係資料写真(一般財団法人沖縄美ら島財団所蔵)に含まれる中城御殿内の写真等、近代の写真資料も前近代の御床飾、座敷飾を遡及的に検討する手がかりになると考えられる。

(2)展示手法についての検討
書院・鎖之間の現状を把握し、展示施設としての条件の他、建築空間の雰囲気・歴史性に見合った展示を実現させるための課題等について検討した。
現在、書院・鎖之間では当財団が所蔵する絵画作品のレプリカを展示している。現状に伴い、今後展示を充実させるにあたっても実際の展示環境に適した原材料、加飾仕様とする等、配慮が必要と考えられる。

(3) 検討委員会の実施
情報収集・調査した内容について、外部有識者を招聘し審議を行った。委員から、南殿や庭園等を含め、儀礼空間としての全体像を検討すること等が協議・提案された。

3.今後の事業展開

1) 展示・復元、施設の利活用

今年度検討した内容をもとに、次年度以降は 展示物の選定や演出方法についての検討を行う。
その内容を踏まえ検討委員会を実施し、展示物の仕様を決定する。また、展示物の調達については既存の所蔵品(レプリカ等)を使用する他、新規物品の製作・購入を想定している。
展示物の調達が進み次第、順次展示を拡充させる予定である。
併せて、来園者へ施設に対し理解を深めてもらう仕組みを作ることも課題となっている。

2)調査・研究

先述の業務と並行し、引き続き当該施設に注目し情報収集を行う。『御書院御物帳』、『御座御飾帳』、『御書院並南風御殿御床飾』(いずれも沖縄県立博物館・美術館所蔵)等から前近代における書院・鎖之間の活用状況、調度品について断片的に窺い知ることができるが、いまだに不明な点が多い。 したがって、今後書院・鎖之間での儀礼に関わる記述等を文献史料から収集し、当該施設についての基礎的な蓄積を得る。これにより、歴史的背景や展示の根拠を深めつつ、首里城全体の中における位置づけが可能になると考えられる。

4.外部評価委員会コメント

財団がその蓄積した成果を外部事業に応用する画期的なプロジェクトであり、社会貢献の面で高く評価できる。また、財団の側にとっても実績を積み上げるまたとない機会であるので、今後とも積極的に取り組むべきである。(高良顧問:琉球大学名誉教授)。


*1琉球文化財研究室

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