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  1. 11)熱帯植物試験圃場植物展示活用実績
沖縄美ら島財団総合研究所

亜熱帯性植物の調査研究

11)熱帯植物試験圃場植物展示活用実績

鈴木愛子*1・稲田幸太*1・端山武*1・具志堅江梨子*1・田代亜紀羅*2

1.はじめに

熱帯植物試験圃場では、生息域外保全及び調査研究、系統保存を目的として約1万3000株の熱帯・亜熱帯性植物を管理している。これらの熱帯・亜熱帯性植物について、普及啓発を目的に、植物観察会や、熱帯ドリームセンターでの展示活用を行ったので報告する。

2.展示活用種及び展示方法

1)展示活用種数

表-1 展示種及び展示数
表-1 展示種及び展示数

観賞価値の高い種、希少性の高い種などを中心に開花した株を展示に活用している。今年度は世界最大花茎を持つグラマトフィラムや臭い匂いを放つゾウコンニャク、琉球弧に生息する希少種など75種149株を熱帯ドリームセンターにて展示し、16種16株を植物観察会での普及啓発活動で使用した。

2)展示方法

展示に当たっては、鉢を陳列するだけではなく、来園者を引き付ける効果的な展示を目指し、熱帯植物試験圃場で展示用躯体を作り、熱帯ドリームセンターの協力を得て行った。また、琉球列島産希少植物については、「奄美・やんばる・西表の貴重な植物展」にて陳列展示及び植栽展示を行った。

  • 2)展示方法
  • 写真-1 躯体作り及び展示風景
    写真-1 躯体作り及び展示風景(左上:展示躯体、右上:ユーロフィラ・ギガンティア、左下:ハベナリア・エリックミケリー、右下:熱帯性カランセ)

(1)ゾウコンニャク

写真-2 ゾウコンニャク開花状況
写真-2 ゾウコンニャク開花状況

東南アジアからパプアニューギニアにかけて分布する植物で、根茎の形が動物のゾウの形に似ていることからゾウコンニャクの和名がある。熱帯植物試験圃場では1994年にボルネオから種子を導入し肥培管理を行い、2001年に初の開花に至った。
今年度は、2018年4月12日の開花に伴い、4月26日までの約2週間展示した。ゾウコンニャクはハエが好む独特な匂いを放ち、植物園以外ではなかなか目にすることが無い珍奇植物であることから、ニュースリリースを行い、沖縄タイムスでの新聞掲載に繋がった。

(2)グラマトフィラム・スペキオスム

写真-3 展示状況(左上:展示作業、中央:展示状況)
写真-3 展示状況(左上:展示作業、中央:展示状況)

独特な花の模様から「タイガーオーキッド」とも呼ばれるラン科植物で、茎の長さは最大7mにも及び、花茎も3m近くまで伸びるとされる世界最大のランである。展示株は、熱帯植物試験圃場で10年以上栽培管理され、今年度は2m以上の花茎を13本伸ばした株であっため、60Lの大鉢を斜めに配置し花茎が来園者から間近に見やすい角度にする工夫を行った。また、花茎の一部を利用し、茎の長さを測れるパネルを設置する等、来園者が長さを体感できる展示を行った。

展示期間は、2018年7月28日から9月18日までの約2ヶ月間行い、ニュースリリースにより、NHKニュースでも取り上げられるなどドリームセンターへの誘客に繋がった。

3.今後の課題

熱帯植物試験圃場スタッフの技術の向上と共に、展示活用できる植物数は増えてきており、これらを有効に活用して、熱帯ドリームセンター及び熱帯・亜熱帯都市緑化植物園などの利用者満足度を挙げていくことは熱帯植物試験圃場の役割として今後も重要である。今年度は、積極的な開花情報、植物情報の共有を行うと共に展示手法にも工夫を凝らしたことで、ニュースリリースにも繋がった。
しかし、長期展示による植物の衰弱、展示管理による花傷みなども発生しており、展示期間中の管理方法や展示期間については、検討が必要である。また、鉢植えで管理した植物は、展示手法も限られ均一なものとなってしまうため、見ごたえのする株作りを試みるとともに、陳列だけではない展示手法を今後も検討していく必要がある。


*1植物研究室・*2植物管理チーム

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