亜熱帯性植物の調査研究
辻本悟志*1
公園利用者が年間700万人を超える海洋博公園内において、約7,000本の緑化樹木が生育している。公園利用者の安全を確保するためには、樹木の適正な管理が不可欠であるが、潜在的な危険性として樹木内部の腐朽や空洞があることから、診断器による腐朽・空洞化診断が求められている。
そこで、本調査では、公園利用者の安全の確保を目的として、γ線樹木腐朽診断機をはじめとした5種類の診断機器による診断調査を実施し、その調査結果と伐採断面との比較を通して、5種類の診断機器の特徴を整理した。
尚、詳細は2019年3月の新潟で行われた日本森林学会で発表済みである。
2018年12月末にγ線をはじめとした5種類の診断器による腐朽診断をモクマオウとセンダン各1個体各1断面を対象として実施し、それらの結果と伐採断面を比較した。また、その結果を基に、各機器の特性や一次データからの解析方法等を樹木医や開発者等からヒアリングした。
(1)γ線樹木腐朽診断機 (写真-1)
γ線の透りやすさ(量)を計測する機器であり、透過量が理論値よりも高い部分を腐朽部あるいは空洞部とみなす。直交する2方向で測定し得られた一次データを基に、二次元イメージが表示される。
伐採断面と診断結果の比較から、両樹種ともに腐朽部及び空洞部を検知可能であった。特に、モクマオウについては空洞が大きいことから、実測値との大きさの違いで、腐朽部の一部と空洞部を一次データから識別が可能であることから、二次元イメージと一次データとの照合でより正確に空洞と腐朽部を識別できる可能性が示唆された。
(2)レジストグラフ
キリが受ける材の硬さ(抵抗値)を計測する機器であり、抵抗値が低い波形を腐朽部あるいは空洞部とみなす。
伐採断面と診断結果の比較から、両樹種ともに、腐朽部及び空洞部の抵抗値が明らかに低いことから、検知が可能であった。しかしながらγ線樹木腐朽診断機と同様、一部検知できなかった腐朽部もあることから、検知できなかった理由について今後検討していく。
(3)PiCUS、ArborSonic 3D (以下、Arbo)、Dr.woods
幹の外周にセンサーを8あるいは16点設置し、それぞれのセンサーから発信された音波が他のセンサーに到達する速度を計測する機器であり、到達時間が遅い2地点間を腐朽部あるいは空洞部とソフトが解析する。前者は、人が打音しその音波で受発信するが、後者は音響波(人工の音で、外部音の影響を受けにくい)を受発信する。
伐採断面と診断結果の比較から、両樹種ともに青・白色や紫色で表示されている部分は、概ね空洞部や腐朽部であるため、それらの色を空洞部や腐朽部とみなすことが可能である。しかし、一次データから二次元イメージは人間で補正をすることができず、ソフトによる解析 (非公開)であった。これらの診断器を使用するに当たっては、二次元イメージが表示されている根拠は提示不能であることを十分認識する必要がある。
γ線の透過量に影響を与えうる含水率や材密度と透過線量の推移との相関を見ていく必要がある。
γ線診断による幹腐朽診断等は、全国価値で進められている有効な非破壊的診断手法のひとつである。全国から経験者等を集めて、予測診断に関する検討会(シンポジウム)などを行う時期に来ている(輿水顧問:(公財)都市緑化機構 理事長)。
*1植物研究室
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