亜熱帯性植物の調査研究
鈴木愛子*1
沖縄のプランター栽培において、従来問題になっている台風や高温による乾燥などから、植栽を健全に維持管理するために開発されたのが、ローメンテナンス底面給水コンテナ(以下、スマートカダン)である。本調査では、スマートカダンの普及を図ることを目的に、花材の生育調査を行い、課題点を抽出するとともに、スマートカダンの栽培に好適な植物の選定を検討する。
前年度 (2018年1月~4月)の冬季生育調査では、花材の生育に問題はなかったものの、根の成長が不良であったことから、アメリカンブルーを花材としたスマートカダン6基を用いて、夏季生育調査を約3ヶ月間(6月21日~10月10日)実施し、根の成長に影響を及ぼす用土と底石についての選定を検討した。用土は、沖縄県で使用頻度の高い赤土(以下、用土①)を含むものと草花栽培で用いられるピートモス主体のもの(以下、用土②)を用い、底石には、日向石あるいは木炭を使用した。
また、夏季好適植物の選定を目的に、同じ調査期間で8種類 (ポーチュラカ、ビンカ、ジニア、ペンタス、ニューギニアインパチェンス、ケイトウ、マリーゴールド、センニチコウ)をスマートカダン1基の中に混植して生育状況を観察した。
約3ヶ月間の給水頻度は生育初期で平均3週間に1回、生育後期では平均2週間に1回程度であった。
(1)用土における生育比較
用土①と用土②のみの比較及び日向石を組み合わせた用土では生育に大きな差は出なかった。底石の違いでは、木炭を組み合わせた用土が最も生育が良く、用土①+木炭、用土②+木炭ともに試験開始から終了までの伸長量が平均30cmとなった (写真-1)。
(2)根の観察
試験期間の終わった苗の根の状態を観察したところ、全ての苗で根の変色等の根腐れ症状は見られなかった。
ニューギニアインパチェンス、ニチニチソウ、センニチコウが花期も長く比較的生育良好であったが、2ヶ月経過時点から肥料欠乏症状が見られだし、花数が減少した。
夏季に於いては、冬季に懸念された根の生育不良は見られなかったが、貯水式底面給水では施肥が難しく、肥料切れになるため、菌根菌などを利用した施肥体系の確立が必要である。
EU等では公共施設における化学合成農薬が使用禁止になることから、化学合成農薬不使用の技術開発に取り組んでいただきたい。また、環境ストレス耐性や病害虫抵抗性を付与する菌根菌とそのパートナー細菌の導入も検討されたい(石井顧問:徳山高等工業専門学校研究員)。
*1植物研究室
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