亜熱帯性植物の調査研究
松原智子*1・遠藤達矢1
夏場にレタス等の葉物野菜を生産するのが難しい沖縄県では、水耕栽培技術等を用いて安心・安全な野菜を安定的に供給できる生産施設、すなわち植物工場が求められている。
本研究では現在の植物工場が抱える課題を解決し、安心・安全な野菜の安定供給および地域産業の振興に貢献する植物工場の実現を目指す。
植物工場の課題として、枯渇の恐れがあるリン鉱石から作られた化学肥料の使用が挙げられる。そのため、有機肥料を用いた水耕栽培技術を構築する必要がある。有機肥料を水耕栽培に利用するのは難しいとされてきたが、石井ら(2016)は野菜の苗にアーバスキュラー菌根菌(AMF)を接種した上で有機水耕栽培を行うと、化学肥料を用いた場合と同等もしくはそれ以上の収量が得られたと報告している。
そこで、本研究ではマメ科植物を主原料として有機肥料を作製し、リーフレタスの栽培試験を行った。
(1)試験区の設計
以下の2つの試験区を設け、リーフレタスの栽培試験を行った。
ア)有機肥料+AMF
イ)化学肥料のみ
(2)生体重および機能性成分含有量の調査
収穫後に全体および地上部の生体重、ビタミンCおよびポリフェノール類の含有量を調査した。
(1)生体重
有機肥料+AMF区の全生体重は、化学肥料区と同等となった。
(2)機能性成分含有量
有機肥料+AMF区の茎葉において、ビタミンCおよびポリフェノール類の含有量は化学肥料のみ区のそれと比較して高かった。
植物工場を事業化し、雇用を創出することによって地域振興を目指すにあたり、少子化の進行に伴って増加している廃校および空き教室に着目した。
本研究では本部町教育委員会の協力の下、上本部小学校(沖縄県国頭郡本部町北里1317)の空き教室に植物工場を設置した(写真-1)。この植物工場で2018年6月から12月までレタスの生産を行い、コストの試算を行った。 9月にはこの植物工場における施設・設備の説明と取り組む課題について紹介するため、本部町の関係者を招待して見学会を開催した。この時にニュースリリースを行ったことで、本部町教頭会およびJAおきなわの関係者、ならびに県内外で植物工場を運営する事業者の視察に繋がった。
有機水耕栽培においても慣行栽培と同等の収量が得られ、さらに機能性成分であるポリフェノール類やビタミンCの濃度が高まることは非常に興味深い。今後はマメ科植物以外の材料やブレンドにも注目し、さらに優れた有機液肥を開発していただきたい。
廃校・空き教室を利用した植物工場にも有機水耕栽培技術を導入し、安心・安全で持続可能なシステムを構築していただきたい(石井顧問:徳山高等工業専門学校研究員)。
参考文献
1) Ishii, T., A. Shano and S. Horii (2016) New organic hydroponic culture using arbuscular mycorrhizal fungi and their partner bacteria, and newly developed safe plant protectants. Proc. QMOH 2015 - First Int. Symp. Qual. Mngmt. Organic Hortic. Prod. 680-690.
*1植物研究室
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