亜熱帯性植物の調査研究
阿部篤志*1・仲宗根忠樹*2・横田昌嗣*3
沖縄諸島においては、分布情報や生育環境等の知見に関し、現状不明の種や未調査の種があること、開発や採集等の人為的な影響、及び植生遷移や自然災害による撹乱等の自然的な影響により、絶滅または減少傾向にある植物に関する調査が不十分であることなど課題が多い。絶滅危惧植物の保護保全、ひいてはその種が生育する自然環境や原風景の保全策を検討するのは急務であり、その基礎資料となる生息域内の現況を把握することは重要である。
本調査の背景として、2014年度から筆者らは「沖縄諸島の絶滅危惧植物に関する現況把握プロジェクト」を立ち上げ、南西諸島の中央部に位置する島嶼群『沖縄諸島』における植物の分布状況、生育立地、絶滅要因、新記録や新産地等の知見を集積し、植物多様性の保護保全、地域連携、普及活動に寄与することを目的に実施している。2018,2019年度は、座間味島を対象として調査を実施している。
本調査は、座間味島の絶滅危惧植物(維管束植物)を対象に、2018年6月~11月にわたり2回実施した。既存資料や有識者からのヒアリングで得た情報等を参考に島内を踏査し、環境省版および沖縄県版レッドデータブックに掲載されている種が出現した場所、出現種、個体数、生育立地、減少要因の知見の記録、生態写真の撮影、標本採集を行った。採集した証拠標本を同定し、(一財)沖縄美ら島財団総合研究センターの植物標本庫に納めた。
座間味島において、オキナワマツバボタン(スベリヒユ科)、ヤエヤマハマナツメ(クロウメモドキ科)、トサカメオトラン(ラン科)が新たに記録され(写真-1)、オキナワハイネズ(ヒノキ科)、シンチクヒメハギ(ヒメハギ科)、オオマツバシバ(イネ科)、ケラマツツジ(ツツジ科)、テンノウメ(バラ科)、ヤエヤマアオキ(アカネ科)等を確認した。また、自生地の開発により絶滅の危機に瀕している、ヒロハケニオイグサ(アカネ科)の集団を46年ぶりに確認した(写真-1)。併せて、上記の種を含む合計16種の生育立地や生育状況に関する知見を集積した。
今後は、2019年度に未踏エリアの調査を実施し、2年度分の成果を重要地域の保護保全、地域連携活動、希少種の保護・保全思想の普及活動に役立てていきたい。
写真-1 ①ヤエヤマハマナツメ、②トサカメオトラン、③ヒロハケニオイグサ
努力の集積によって貴重な成果がもたらされている(唐澤顧問:ラン研究家)。
*1植物研究室・*2株式会社ツドイカンパニー・*3琉球大学
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