普及啓発の取り組み
板井英伸*1
太平洋島嶼域や沖縄の海洋文化に関する展示を行っている海洋文化館の魅力を発信し、知名度の向上と利用促進を図ることを目的に、「海洋文化講座」と題し、島々の海洋文化を題材とした一般向け館内ガイドツアーおよびギャラリートークを実施した。実施にあたり、総合研究センターが行っている海洋文化に関する調査研究の成果を積極的に活用し、発信した。
今年度に実施した海洋文化講座は全12回(表-1)、参加者総数は236名であった。参加人数は前年度比128%と増加した。
対象は高校生以上で、3回を海洋文化館で、5回を名護市安部、嘉陽地区、美ら島自然学校で実施した。各回、沖縄や太平洋地域における海洋文化(伝統的航海術や造船技術、来訪神儀礼など、海を視野に入れた信仰や社会のあり方など)をテーマに選び、それらについて解説する形で実施した(写真-1)。
年間2回、開催した。高校生以上を対象とし、どちらも沖縄伝統の木造漁船・サバニをとりあげた。1回目は操船技術の継承と発展を、2回目はその造船技術の復興をテーマに据え、それぞれサバニを使った長距離の航海を実施している人物と、サバニを建造している3名の若手船大工を外部講師として招き、海洋文化館・交流ゾーンのステージでスライドや動画の上映を行うとともに、観衆も交えた対話を行った(写真-2)。
主に親子連れを対象に、年間2回、実施した。1回目は普及開発課職員を講師とする沖縄伝統の子ども凧・カーブヤーづくりを行い、2回目は元名護市立博物館長・島袋正敏氏を講師に招き、オセアニア地域のカヌーの帆の製作技術を用いて、アダン葉を材料にしたコースター作りを行った。
なお、いずれの場合も海洋文化館そのものや、展示資料に対する興味を喚起することを意図して、開始前に普及開発課員による沖縄の船や太平洋の船、伝統的航海術などに関する20分程度の講義を行った。
複数回参加するリピーターも認められたように、海洋文化館の魅力を発信し、誘客につなげられた。また、県内の海洋文化の愛好家や技術の継承者らを外部講師として招くことによって、海洋文化館を核とする人的ネットワークの構築ができた。また、美ら島自然学校でも諸講座を実施したことは、地域との連携強化につながった。
今後は新聞等メディアを通じた広報に努めるとともに、美ら島自然学校や地域の公民館など海洋文化館外でも講座や写真展を実施するなどして、さらなる認知度の向上と利用者の獲得を図ることとする。
海洋文化館の利用に関して、多方面からの試みがなされている。とくにガイドツアーやギャラリートーク、工作教室、自然学校は社会的評価も得ているようであり、さらに学会(日本オセアニア学会)との連携も開始されたので、今後も継続的発展が期待できる。(後藤顧問:南山大学 教授)。
表-1 平成30年度 海洋文化講座一覧
*1普及開発課
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