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  1. 9)首里城に関する普及啓発事業
沖縄美ら島財団総合研究所

普及啓発の取り組み

9)首里城に関する普及啓発事業

安里成哉*1

1. はじめに

総合研究センター琉球文化財研究室では、首里城に関する普及啓発事業の一環で、首里城講座・首里城基金講座の開催及び年報の発行を行った。

2.首里城講座

1)概要

首里城講座は、首里城に関する歴史・文化を県民に普及啓発することを目的に首里城公園首里杜館1階情報センターで開催した。当財団の職員の他に県内の多才な講師陣を招聘し、4期14回行った。
第1期は首里城公園の発掘調査成果について、第2、3期は首里城公園で開催された企画展と連動した講座を行った。第4期は新たに開園した「御内原エリア」をテーマに講座を開催した。

2)講師とテーマ

第1期(6月22、29日、7月6、13日)
第1回 「首里城当蔵旧水路・首里城跡の発掘調査成果」
講 師 瀬戸哲也(沖縄県立埋蔵文化財センター)

第2回 「首里城跡の発掘調査成果」
講 師 新垣力(沖縄県立埋蔵文化財センター)

第3回 「首里高校内中城御殿の発掘調査成果」
講 師 亀島慎吾(沖縄県立埋蔵文化財センター)

第4回 「那覇東村跡の発掘調査成果」
講 師 金城貴子(沖縄県立埋蔵文化財センター)

第2期(8月3、10、17日)
第1回 「新発見!!神猫図の秘密」
講 師 上江洲安亨(当財団総合研究センター)

第2回 「『美の動物園』展示レイアウトデザインについて」
講 師 仲嶺絵里奈(写真史研究家)

第3回 「『美の動物園』の染織技法について」
講 師 宮城 奈々(当財団総合研究センター)

第3期(11月23、30日、12月14日)
第1回 「御座楽楽器にまつわるエトセトラ」
講 師 長嶺亮子(沖縄県立芸術大学附属研究所共同研究員)

第2回 「京都六孫王神社に残る琉球人扁額と原本~ニセ正使とよばれた男の生涯~」
講 師 上江洲安亨

第3回 「琉球使節と楽童子」
講 師 輝広志(当財団首里城公園管理部)

第4期(平成31年2月8、15、22日、3月1日)
第1回 「王朝時代の中国伝来音楽」
講 師 喜名盛昭(中国民俗音楽研究家)

第2回 「首里城の十嶽と祭祀-御内原を中心に-」
講 師 新里涼子(株式会社国建)

第3回 「オモロにみる首里城-巻五を中心に-」
講 師 仲原伸子(沖縄国際大学非常勤講師・おもろ研究会会員)

第4回 「発掘調査成果にみる首里城跡「御内原」の姿」
講 師 新垣力(沖縄県立埋蔵文化財センター)

3)まとめ

第4期の御内原エリアに関する講座は好評で、同じテーマでまた開催してほしいとの要望もあった。今後も首里城公園の魅力や調査報告成果を発信できる場として継続したい。

2.首里城基金講座

1)概要

首里城基金とは、国内外に散逸した首里城関係の文化遺産の収集・保存・復元を行うために、沖縄県、市町村、各種団体、また多くの方々からご協力を得て設置されている基金である。
本講座は首里城基金の普及を図るために、基金の意義や活用状況報告をした。

2)講座内容

講座は平成30年11月9日金曜日に、首里城公園首里杜館1階情報センターで行った。講師は当財団総合研究センターの上江洲安亨が務めた。
「新発見!!中山門図の解説」というテーマで、平成29年度に新たに首里城基金で収集した絵画「中山門図」を始め、「神猫図」などの新収蔵品の解説を行った。25名の参加者があった。

3)総括

首里城基金について理解している参加者は約半数で、首里城WAONに関しては2割程度に留まった。文化財に興味関心がある層は比較的年齢が高い層が多いが、電子マネーなどを頻繁に使用する層では無いためそのギャップがあると思われる。今後も講座を開催し成果報告を行いつつ、関心がある層にどのように文化財の保護等に参加できるかを併せて伝えていく必要があると感じた。

3.年報の刊行

1)概要

琉球文化財研究室では、首里城に関する展示会、収蔵品の修繕報告及び調査研究をまとめ、年報を刊行している。刊行した年報は、沖縄県内の公立図書館、文化財関連施設等に配布した。

4.尚家文書複製本製作業務

1)概要

尚家文書とは、那覇市歴史博物館に所蔵されている尚家(琉球国王家)に伝わっていた史料のことで、当財団では平成21年度から首里城に関する調査研究・普及啓発を目的に複製本の製作を行っている。平成27年度に尚家文書複製を一通り終え、同年に同館所有の家譜(琉球の士族の系図を記した史料)のスキャニングも行っている。

2)成果品

今年度は7,140コマ(100冊)の家譜マイクロフィルムのスキャニングを行い、PDFデータとした。

3)展開

尚家文書及び家譜は、琉球王国時代を知る貴重な資料だが、複製本が多く作られている訳ではなく、一般に閲覧が容易ではない。当財団で複製製作を行い、首里城に関する歴史・文化を研究・学習する方々が資料を閲覧しやすくなるよう、環境及び資料整備を実施していく。

5.外部評価委員会コメント

「首里城講座」の内容はクオリティが高く、一般の(市民)講座との違いを図れていると思う。(現在のように)実物を見ることができ、内容が(深く)突っ込んだものであってよいと考える。(高良顧問:琉球大学名誉教授)

  • 写真-1 首里城講座の様子
    写真-1 首里城講座の様子
  • 写真-2 講師の上江洲安亨
    写真-2 講師の上江洲安亨

*1琉球文化財研究室

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