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  1. 植物研究室
沖縄美ら島財団総合研究所

亜熱帯性植物の調査研究

植物研究室

篠原礼乃*1

1. はじめに

植物研究室は、総合研究センターの目標である「環境問題への対応」、「産業振興への寄与」、「公園機能の向上」を念頭に亜熱帯性植物に関する調査研究・技術開発並びに普及啓発事業を実施している。
平成29年度は「環境問題への対応」として、琉球列島に生育する希少植物の保全に関する調査研究、「産業振興への寄与」として、有用植物の利用開発、「公園機能の向上」として、都市緑化に関する調査研究等を実施した。普及啓発事業としては、沖縄県立博物館・美術館において企画展「やんばるの森の美 写真展」を開催した他、国立科学博物館巡回展への協力を行った。また、海洋博公園において講演講習会等を開催した他、各種講演会等へ講師を派遣した。国際交流事業としては、沖縄国際洋蘭博覧会を開催した。

2.実施体制


図-1 植物研究室体制図

植物研究室の体制は平成28年度においては、正職員3名、契約職員4名であったが、平成29年4月に園芸植物、植物管理分野を担当する契約職1名、6月に優良土壌菌分野を担当する契約職1名、12月に組織培養分野を担当する契約職1名を採用し、専門性の高い調査研究を行う契約職は6名となった。(都市緑化分野担当契約職1名が7月に減) このほか、希少植物調査、培養等の業務補助を行う契約職2名、圃場等における植物管理業務等を担当する契約職7名で事業を実施した。

3.実施内容

1)希少植物の保全に関する調査研究

沖縄県の自生植物のうち、「改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(菌類編・植物編)2006年発刊」に記載された種(絶滅危惧植物)の保全に寄与することを目的に、生育環境、生育状況、減少要因等の調査を行った。平成29年度は、伊平屋島における調査で絶滅危惧IA類のコショウノキ、ナゴランの大集団等45種を確認した。沖縄の里地・里山に生育する希少植物については、離島9島を調査し標本を採集した。本調査において、伊平屋島で沖縄県初記録となるコアゼテンツキを確認した。
西表島植物誌編纂事業については、現地調査を行い標本を採集した。

2)有用植物の利用開発

絶滅危惧植物リュウキュウベンケイを元に作出した新品種「ちゅららシリーズ」の普及に向けて、沖縄県園芸振興課等と連携を図りながら実証栽培を行った。平成29年度は本部町内において、切花を約60,000本生産し、県外の市場へ試験出荷したほか、一部県内において販売した。また、海洋博公園熱帯ドリームセンターにおいて装飾で使用し、認知度の向上に努めた。さらに、より市場からニーズの高い花色や、草姿、強健な種を得るため、交配育種により優良な品種を得たほか、突然変異育種を実施した。
その他、コウトウシュウカイドウやリュウキュウコンテリギ、ダイサギソウ等、園芸的に利用価値の高い在来種について育種に関する研究を行った。

3)都市緑化に関する調査研究

沖縄県において主に使用される緑化樹木の剪定手法に関する調査が完了したことから、本調査の成果を技術書としてとりまとめ発刊することを目指し、緑化に携わる技術者へ内容に関するヒアリングを実施した。沖縄における蜜源植物に関する調査については補足調査を実施し、今年度で調査が完了した。
インドアグリーンとオフィスのストレス抑制に関する調査については、名桜大学と共同で調査を行った。また、沖縄に適した低管理型プランターの性能試験、及び優良土壌菌に関する調査を実施した。

4)普及啓発事業

調査研究で得られた成果を一般の方々へ広く普及することを目的に、総合研究センターが主催する「美ら島自然教室」や、関係機関等からの依頼を受け、沖縄の植物等に関する一般向け教室や、講演会を実施した他、琉球大学及び名桜大学で財団が実施した寄附講座へ講師を派遣した。
海洋博公園における「沖縄の貴重な昆虫展」においては、ワークショップの開催及び昆虫標本の貸出しを行った他、緑化樹木の剪定技術に関する講習会を開催した。
2017年5月6日(土)〜6月25日(日)にかけ、沖縄島北部に位置するやんばるにおいて撮影された動植物の写真展を沖縄県立博物館・美術館にて開催した。
国立科学博物館巡回展「琉球の植物」を海洋博公園熱帯ドリームセンターほか、県内博物館6館において開催し、これにあわせ希少植物(鉢物)や写真パネル等の貸出しを行った。
2月には32回目となる「沖縄国際洋蘭博覧会」を開催し、国外出展は12ヶ国1地域、国内出展は29都府県より出展があった。
また、「春の緑化推進運動」及び「秋の都市緑化月間」の際、海洋博公園内において行われた苗木の無料配布について配布用苗の提供を行い、豊見城市で開催された沖縄都市緑化祭においても配布用苗を800鉢提供した。

5)別途受託事業

平成29年度は、環境省那覇事務所、沖縄県等より下記事業を受託し実施した。
① 平成29年度寄託管理事業(ワシントン条約に基づき空港等で没収された植物の管理を行う)【(公社) 日本植物園協会】
② 平成29年度熱帯果樹優良種苗普及システム構築事業【沖縄県】
③ 希少野生植物の生息域外保全検討実施委託業務 受託【日本植物園協会】
④ 平成29年度奄美大島に生育する着生ランの野生復帰事業 【(一財)自然環境研究センター】
⑤ 平成29年やんばる地域希少植物生育状況調査業務【環境省那覇自然環境事務所】
⑥ 沖縄県かんしょ奨励品種の節培養による苗増殖及び発送に関する業務【沖縄県】
⑦ 平成29年度桜開花調整実証業務委託【名護市】

4.今後の課題


図-2 植物研究室の目的と事業(課題)

沖縄における緑化樹木の生育特性に関する調査、及び蜜源植物に関する調査については、平成29年度で調査を終えたことから、これらの成果をひろく公表するため、技術書や図鑑、一般書籍として発刊を行うが、書籍のみでなくウェブサイト等も活用し、広く成果を公表できるよう努めたい。
現在、総合研究センターの目的である「環境問題への対応」、「産業振興への寄与」については、調査研究・技術開発事業及び普及啓発事業を実施し、効果をあげているところである。しかし、「公園機能の向上」については、都市緑化に関する調査研究事業で終了したものがあること、並びに当財団が担う中心的な事業として国営沖縄記念公園等施設の維持管理、運営があることから、都市緑化の推進、並びに多くの方々に公園等施設を利用していただくために、今後は緑化手法や植栽展示手法等に関する調査研究の推進を図りたい。


*1植物研究室

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