亜熱帯性植物の調査研究
赤井賢成*1
台湾国立自然科学博物館、ソロモン諸島森林省および高知県立牧野植物園は、平成24年から「ソロモン諸島植物誌」編纂を目的に共同研究を展開してきた。植物誌の編纂には、証拠となる標本採集および同定が不可欠である。しかしながら、現時点でソロモン諸島は植物インベントリー調査が不十分であり、植物誌の編纂にあたって更なる標本の蓄積が求められている。
平成29年7月以降、高知県立牧野植物園に代わって当財団が当該共同研究に参画し、台湾国立自然科学博物館、ソロモン諸島森林省の調査団が実施する野外調査に同行して、標本情報の蓄積を支援することとなった。また、当財団では独自にソロモン諸島の有用資源植物とそれらの栽培管理についても調査を行い、沖縄県の農業振興に利活用できるシーズを探査することとした。
平成29年6月に二期MoAの締結は完了したものの、現在は台湾側の予算が確保できていないため、共同研究は休止状態にある。そのこともあって平成29年度に現地調査を実施することはできなかったが、台湾側の予算が確保された段階で直ちに共同研究を再開できるよう当財団では外部資金を含む研究費の確保や既往文献の調査等を進めているところである。本報では、これまでに実施した既往文献の調査結果について報告する。
BioONE、CiNii、Google、Google Scholar、J-Stage、JSTOR、Pubmedの7つの検索エンジンで「Solomon Islands」、「Solomon Islands + plant」、「ソロモン諸島」及び「ソロモン諸島 + 植物」の4つの用語を用いて、既往文献を検索した。また、Botanical Journal of the Linnean Society、Kew Bulletin、Plant Systematics and Evolution、Philosophical Transactions of the Royal Society of London Series B, Biological Sciences、Phytotaxa、Reinwardtia、Systematic Botany、Taxon、The Gardens' Bulletin Singaporeの合計10誌のバックナンバーをあたり、ソロモン諸島を含むメラネシアの植物に関連する既往文献を抽出した。さらに、入手した文献の孫引きを行い、更なる文献情報の収集に努めた。
検索の結果、1882年以降2016年までの135年間に公表された合計103報の既往文献を確認することができ、植物研究室の遠藤達矢氏と共に文献目録を作成した(図-1)。これらの内訳は、書籍16冊、論文78報、レポート9報であった。現在は2016年以降に公表された既往文献の検索を行っているところである。
ソロモン諸島で過去に採集された標本は、イギリス、米国等に分散して収蔵されている。今後、これらの標本を借用して同定を進めるほか、伐採や地球温暖化に伴う海水面上昇の影響が大きい島嶼を中心に、現地調査を進めていく所存である。
*1植物研究室
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