亜熱帯性植物の調査研究
篠原礼乃*1
植物研究室では,総合研究センターの目標として掲げている「産業振興への寄与」「環境問題への対応」「公園機能の向上」を念頭に亜熱帯性植物に関する調査研究・技術開発を行っている。
平成28年度は希少植物の保全に関する調査研究、有用植物の利用開発、都市緑化に関する調査研究等を実施し、普及啓発事業としては国際交流事業として、沖縄国際洋蘭博覧会を開催したほか、海洋博公園において講演講習会等を開催した。
植物研究室の体制は正職員3名、契約職4名、培養等の業務補助を行う契約職1名、圃場における植物管理業務等を担当する契約職6名で事業を実施した。
沖縄県の自生植物のうち、「改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(菌類編・植物編)2006年発刊」に記載された種(絶滅危惧植物)の保全に寄与することを目的に、自生地把握、絶滅危機状況把握等を目的に調査を行った。平成28年度は、伊平屋島における調査で絶滅危惧IB類のオオマツバシバ、エダウチヤガラを含む25種の位置情報、個体数、生育環境等の知見を集積した。沖縄の里地・里山に生育する希少植物については、与那国島、石垣島等において調査を行い420種1200点の標本を採集した。本調査において、現状不明種シマバラソウを伊是名島において24年ぶりに確認した。
今年度からの5年計画で西表島植物誌を編纂することとし、それに向けて調査を開始した。6回の現地調査で320種、1080点の標本を採集した。
絶滅危惧植物リュウキュウベンケイを元に作出した新品種「ちゅららシリーズ」の普及に向けて、沖縄県園芸振興課等と連携を図りながら実証栽培を行った。県内8か所の農場において切花を80,000本生産し、内50,000本の切花を大田市場等県外主要都市の市場へ試験出荷した。
ラン類では、フウランを用いた交配による雑種個体を獲得した。また、培養技術による新品種作出については、紫外線や薬品による突然変異種を作出するための条件を構築した。
有用植物の機能性分子解析については、琉球王朝時代より防虫・芳香の目的で使用されてきたモロコシソウについて、揮発性成分及びハーバルウォーターの成分分析を行った。
都市緑化に関する調査研究としては、オオバナソシンカやホウオウボク等、沖縄県において多く使用される樹木の剪定手法について調査し、樹種ごとに持っておも適した手法の検討を行った。また、沖縄の蜜源植物に関する調査では、平成27年度に不足していた4,5月の調査を行い、開花期、蜜量、糖度、ミツバチの訪花について調査を行った。
調査研究で得られた成果を一般の方々へ広く普及することを目的に、総合研究センターが開催している「美ら島自然教室」や、「沖縄美ら島財団寄附講座in名桜大学」において講義を行った。
また、関係機関等からの依頼を受け、緑化に関する研修会や講演会を実施した。
花と緑あふれる潤いあるまちづくりを推進するため、沖縄に適した緑化植物や花のまちづくりに精通した人材を育成するために「花・緑コーディネーターの育成」を行っており、平成28年度は本認定を受けた人々が、海洋博公園で行われたチューリップ植え付けボランティアを行った。
海洋博公園で開催された「沖縄の貴重な昆虫展」においては、ワークショップの開催及び昆虫標本の貸出しを行った他、「沖縄の貴重な植物展(やんばるの貴重な植物展)」においては希少植物(鉢物)や写真パネル等の貸出しを行った。2月には第31回目となる「沖縄国際洋蘭博覧会」を開催し、国外出展は12ヶ国1地域、国内出展は27都府県より出展があった。
また、「春の緑化推進運動」及び「秋の都市緑化月間」の際、海洋博公園内において行われた苗木の無料配布について配布用苗の提供を行い、宜野湾市で開催された沖縄都市緑化祭においても配布用苗を800鉢提供した。
平成28年度は、環境省那覇事務所、沖縄県等より下記事業を受託し実施した。
沖縄における緑化樹木の生育特性に関する調査、及び蜜源植物に関する調査については、平成28年度で調査を終えたことから、今後はこれらの成果を図鑑やマニュアルとしてとりまとめ発刊に撮りかかる。発刊後は関係機関への配布や講演会を行う等得られた成果を広く一般へ伝えるため、普及啓発事業を併せて実施していく。また、その他発刊を予定しているが継続して作業しているその他の図鑑、マニュアル等についても早期に作業を終え成果を公表できるよう努める。
*1植物研究室
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