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  1. 12)海洋文化に関する普及啓発事業
沖縄美ら島財団総合研究所

普及啓発の取り組み

12)海洋文化に関する普及啓発事業

泉 千尋*1

1.はじめに

(一財)沖縄美ら島財団が平成24年10月に公益法人から一般財団法人に移行し、定款の変更が行われ、海洋文化に関する調査研究・技術開発、知識の普及啓発事業を実施することが改めて定款に記載された。当財団では平成26年度より組織体制を整え、第Ⅲ期中期事業において事業の推進を図ることを明記している。平成28年度は前年度に引き続き国営公園管理部と連携し、海洋文化に関する学習会、海洋文化関連の映像制作、インターネット上での映像公開、沖縄県立博物館・美術館での上映及び海外での広報活動を実施した。

2.海洋文化教室等の実施

1)目的

海洋文化教室の実施、海洋文化関連の映像制作と公開、海外での広報活動等を実施することで、琉球列島・太平洋地域の島々に伝わる海洋文化に関する知識を社会に広く発信する。

2)内容

(1)海洋文化教室

年間4回の教室を開催した。太平洋地域の島々に伝わる海洋文化、この地域に必要不可欠な伝統的航海術の技術、航海術習得に必要な天文学に造詣が深い有識者を講師として招き、海洋文化館等において実施した。参加者数は計1,262名であった。各回の事業名と実施日は表-1の通りである。

表-1 海洋文化教室一覧

-- 実施日 事業名
第1回 5月4日 古典フラ上演&「ハカ」ワークショップ
第2回 7月2~3日 星空観察会及びKAGAYA講演会
第3回 8月21~22日 「体感!太平洋のスーパー・カヌー」
第4回 10月29日 古典フラ上演

第1回、第4回の教室では、海洋文化館内でハワイの古典フラの上演及びワークショップを実施した。ハワイ語のチャントと太鼓のみをバックに伝統衣装を纏い展示資料と同じ楽器を用いた演舞とワークショップ等を行った。古典フラへの関心度が大変高く、太平洋地域の伝統文化の魅力を多くの人々へ発信、理解を深めてもらう機会となった。(図-1)。
第2回の教室では、伝統的航海術の習得に必須の知識である天文学に特化した講座を実施した(公園外での星空観察会・海洋文化館内での講演会)。講師にSNSでの情報発信力の高い海洋文化館プラネタリウム番組の監督・KAGAYA(加賀谷 穣)氏を招き、講師の運営するSNSでの情報発信・県内プラネタリウム施設と連携した広報展開により情報が拡散、天文好きな客層に向けての普及啓発に繋がった。(図-2)

  • 図-1 第1回海洋文化教室の様子

    図-1 第1回海洋文化教室の様子

  • 図-2 第2回海洋文化教室の様子

    図-2 第2回海洋文化教室の様子

第3回の教室では、伝統的航海術の習得に用いる「星座コンパス」を使った「伝統航海術講座」と、この航海術で航海し海洋文化館で展示中のリエン・ポロワット号の乗船体験を実施した。同時に、1975年、沖縄国際海洋博覧会の会場にミクロネシアから伝統的航海術で3000kmを航海したカヌー「チェチェメニ号」の航海を記録した映画「チェチェメニ号の冒険」を上映した。海洋文化館の展示の柱でもある伝統的航海術をテーマとした講座を行うことで、カヌーを展示するだけでは伝えきれない、伝統航海士の五感を使った航海術の奥深さを発信することができた。また、カヌー乗船体験では、順番待ちができるほどの人気であった。
海洋文化館の展示資料を活用した体験型学習プログラムは初めての試みであったが、子供たちが展示資料の価値や奥深さを楽しみながら理解できる体験型のイベントとなり、満足度が大変高かった。今後の海洋文化に関する普及啓発事業の展開を検討する上でも、本イベントは大変有益な結果を得ることができた。(図-3)

  • 図-3 第3回海洋文化教室の様子(1)

    図-3 第3回海洋文化教室の様子(1)

  • 図-3 第3回海洋文化教室の様子(2)

    図-4 第3回海洋文化教室の様子(2)

(2)海洋文化関連の映像制作、海洋文化館HPや動画サイトへの公開及び博物館施設での上映

海洋文化に関する映像番組(日本語音声・英語字幕)の制作を行い、海洋文化館のHP・動画サイトで公開した。また、平成28年11月15日~平成29年1月15日に行われた、沖縄県立博物館・美術館特別展「港川人の時代とその後-琉球弧をめぐる人類史の起源と展開-」会場内に設置された海洋文化館サテライト展示コーナーで映像を上映し、海洋文化の普及啓発を行った。

(3)海外(グアム)での広報活動

図-4 太平洋芸術祭(カヌーサミット)での広報活動
図-5 太平洋芸術祭(カヌーサミット)での広報活動

平成28年5月22日~6月4日にグアムで実施された太平洋芸術祭の会場で海洋文化に関する広報活動を実施した。太平洋芸術祭は4年ごとに開催され、太平洋全域から職人が集まり伝統技術・芸能を披露し、互いの文化交流を図る大規模なイベントである。開催期間中に「カヌーサミット」が行われ、太平洋地域の海洋文化(カヌー・伝統的航海術等)に携わる人々が集まり、各地域で行われている事業の報告・意見交換が行われた。
太平洋芸術祭・カヌーサミット会場で、海洋文化館のPR映像を上映したところ、映像の内容に関する質問が相次ぎ、文化館のパンフレット・チラシ・オリジナルグッズを全て配布できた。
また、映像を見た大学教授からは、海洋文化館で学芸員実習を行いたいという打診もあり、参加者からの関心が大変高かった。
海洋文化に携わる人々の集まる場での広報を行ったことで、海洋文化館の展示内容と彼らの活動との共通性をアピールし、海洋文化館を拠点とした海洋文化ネットワーク構築への寄与ができた。(図-5)



*1普及開発課

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