スマートフォンサイトはこちら
  1. 8)新報サイエンスクラブ
沖縄美ら島財団総合研究所

普及啓発の取り組み

8)新報サイエンスクラブ

鈴木瑞穂*1・前田好美*1

1.はじめに

新報サイエンスクラブは、県内の小中学生が行う沖縄の自然や動植物に関する調査研究を対象に助成を行うものである。児童生徒の「科学の芽」を育み、環境の重要性や沖縄の自然環境への関心を高めるとともに、自然科学の研究者や環境学習・教育の指導者等、次代を担う人材の育成を目的として実施した。今年度は5回目の実施となり、昨年度に引き続き小学生20件程度、中学生10件程度を採用件数とした。

2.事業内容

1)募集および応募状況

平成28年4月20日(水)から6月3日(金)にかけて募集を行った。応募総数は53件で、小学生43件、中学生10件であった。6月15日(水)に審査会を開催し、全34件(小学生24件、中学生10件)が採択された。

2)サイエンスクラブ講演会「科学って楽しい!」

5月22日(日)、財団40周年事業として開催し、自然や動植物の不思議さや、実験を通した科学の楽しさを伝えることを目的に実施した。講師として、理学博士の佐藤寛之氏と県立総合教育センターの金城靖信氏を招いて講演を行った。

3)オリエンテーション、OIST見学会、研究レクチャー・フォローアップ&総合研究センター見学会

  1. オリエンテーション
    6月26日(土)、オリエンテーションを開催し、事業の概要、助成金、スケジュール、発表会等について説明を行った。また、南九州大学の遠藤 晃教授を招き、研究の進め方等に関する講演を行った。
  2. 沖縄科学技術大学院大学(OIST)見学会
    7月27日(水)、沖縄科学技術大学院大学(恩納村)の施設見学を開催した。
  3. 研究レクチャー・フォローアップセミナー&宿泊体験学習
    8月13-14日(土・日)、美ら島研究センター、名護青少年の家及び美ら島自然学校において開催した。始めに当財団参与の西平守孝より「けんきゅうはなぞとき」と題した講演を行った。その後、助成対象者は事前に記入した中間報告書を基に、分野ごとに分かれた財団職員に対して中間発表を行い、研究を行う上で困っていること等を相談した。セミナー終了後には、美ら島研究センターの施設や標本庫等を見学した(図-1)。
    フォローアップセミナーに加え、財団40周年事業として、宿泊型体験学習を実施し、助成研究者同士の交流の場を設け、野外での調査体験を行った(図-2)。
  4. 研究のまとめ方セミナーおよび風樹館見学会
    11月5日(土)、琉球大学資料館である風樹館(西原町)において研究のまとめ方セミナーおよび風樹館見学会を開催した。琉球大学資料館(風樹館)学芸員・佐々木健志氏が研究のまとめ方に関する講演を行った。講演後、施設内の見学も行った。
  • 図-1 フォローアップセミナー

    図-1 フォローアップセミナー

  • 図-2 野外調査実習

    図-2 野外調査実習

4)フォローアップ

本事業では、単に研究費用の助成を行うだけでなく、研究を進めていく中で疑問に思ったことや悩んでいることなどを解決するため、専門家に相談することができる「フォローアップ」制度を設けている。フォローアップについては、当財団職員や各分野の専門家が対応にあたっており、今年度のフォローアップ利用は12組17件であった(表-1)。

表-1 フォローアップ対応一覧

日付 内容
6/28(火) 大野山林の野鳥を守りたい(1)
7/20(水) 海岸でみつけたホネしらべ
8/8(月) 食虫植物の生態3
8/11(木) 海岸の化石調べ パート4 ~サメの歯の密度比較~
8/13(土) マダラコウロギの生態の観察
8/14(日) 大野山林の野鳥を守りたい(2)
8/14(日) 竜の家には、何が住んでいるのか?
8/20(土) 海の漂着物
8/27(土) 太陽の光についての研究
9/3(土) 大野山林の野鳥を守りたい(3)
9/17(土) 天久ちゅらまち公園にある池について
10/14(金) 沖縄の鉱物、砂、土、地層について(1)
10/17(月) しおかぜ(潮風)ってなあに?しょっぱいの?
10/26(水) 沖縄の鉱物、砂、土、地層について(2)
11/12(土) いろいろ色水 パート3
11/19(土) 沖縄の鉱物、砂、土、地層について(3)
11/29(火) 沖縄の鉱物、砂、土、地層について(4)

4)研究発表会

平成28年1月28日(土)、浦添市てだこホール市民交流室にて発表会を開催した。調査研究に取り組んだ全34個人・団体が、研究成果をまとめたポスターを会場に掲示し、4グループに分かれてそれぞれ40分の持ち時間で発表を行った(図-3,4)。発表会では、研究者全員が発表者または質問者となり、活発な意見交換が行われた。ポスター発表終了後、識者からの総評として元沖縄生物教育研究会会長の安座真安史氏が総評を述べた後、全員に修了証と記念品が手渡された。

  • 図-3 研究発表会

    図-3 研究発表会

  • 図-4 研究成果を発表する研究者

    図-4 研究成果を発表する研究者

3.まとめ

本事業の特色となっている「フォローアップ制度」の利用は年々増加しており、今後も助成研究者が相談しやすい環境づくりに留意して事業を進める。また、今年度は財団設立40周年記念事業として「宿泊体験学習」を実施した。研究者同士がお互いの研究について意見交換する場を提供し、さらなる「発見」や「気づき」を促すことを目的として行ったところ、助成研究者同士が宿泊プログラムを通して交流を深め、お互いの研究について意見交換する姿がみられた。
研究発表会では、採択された34件の研究者のうち、1件が学校行事により欠席となったが、ポスターおよび報告書の提出は完了しており、概ね計画通りに遂行された。発表終了後は、今年度の特別協賛であるNTT西日本のNTT研究所見学ツアーへの参加者選出抽選会が行われ、小学生・中学生各1名が選出され、後日見学ツアーを行った。



*1普及開発課

ページTOPへ