普及啓発の取り組み
前田好美*1・鈴木瑞穂*1・岡慎一郎*2
学校教育と連携した普及啓発事業の確立は、そこに通う児童生徒の環境保全意識の向上を図る上で重要な要素の一つである。
やんばる環境学習では、県内北部地域の小学校や教育委員会等と連携し、年に5回以上の学習を継続する「通年学習プログラム」の展開を図っている。また、1~2回完結型の「短期学習プログラム」を「出前授業」と称し、県内各地の小中学校を対象に展開した。
本事業では、主に総合的学習の時間を利用して行い、地域の水生生物や沖縄の自然について、当センター職員による解説や野外活動等を通した学習を行った。
(1)ウミガメから学ぶ環境学習
平成28年度は、名護市立小中一貫教育校緑風学園および名護市立名護小学校に加え、名護市立稲田小学校との連携による学習を展開した。学習では当センター職員が講師となり、ウミガメやサンゴ、漂着物等について知識の提供を行った。
・名護市立小中一貫教育校 緑風学園
平成26年度に連携を開始した緑風学園では、前年度までの2学年(3、6年生)に加え、4、5、7学年での学習を開始した。各学年でテーマを違え、3年生から順に「ウミガメ」「川の生き物」「地域の食」「ウミガメとイノー」「地域の調査」とした。学習は平成28年5月~平成29月1月にかけて行い、年4回~9回の学習を行った。実施場所は緑風学園内施設、美ら島自然学校(図-1)、地域(図-2)等であった。平成29年3月にはまとめ発表会を開催し、ポスター発表や紙芝居、劇等の手法を用いて発表した(図-3)。
図-1 美ら島自然学校を利用した体験活動(3年生)
図-2 地域の川(汀間)での活動(4年生)
図-3 発表会の様子(5、6年生)
・名護市立名護小学校
4年生に対し「イノーの生き物とウミガメ」をテーマに年5回の学習会を行った。1学期はイノーの生き物を題材に事前学習を行った後、本部町備瀬区にてイノー観察会を行った(図-4)。2学期はウミガメを題材に学習を行い、「ウミガメの生態や形態」「ウミガメをとりまく環境」について講義した他、ウミガメ生体を用いて形態観察を行った。
・名護市立稲田小学校
3年生を対象に全4回実施した。「イノーの生き物」「ウミガメの生態」について授業を実施した後、本部町備瀬区においてイノー観察を行い、名護市内の海岸との環境の違いを比較した。
また、2学期には「ウミガメの生体観察」「ウミガメをとりまく環境」について学習(図-5)した後、地域の砂浜で海岸清掃を行った。
(2)川の生き物教室
平成25年度より名護市立真喜屋小学校と連携して河川の環境学習を行っている。平成27年度も引き続き、小学校4年生を対象に年4回の学習会を行った。当センターから淡水魚に詳しい職員を講師として派遣し、「沖縄の河川生態系について(概説)」、「地元のリュウキュウアユについて」、「川で安全に遊ぶ方法について」の計3回にわたり授業を行った。その後、8月には野外学習として源河川での観察会を行った。また、国頭村立安波小学校全校生徒を対象に、事前学習を1回、現地での川の生き物観察会を2回行った。
地域の環境や動植物に対する興味関心を引き出すことを目的に、1~2回完結型の短期学習プログラムを、県内の小中学校を対象に実施した。
平成28年度は県内小中学校10校からの依頼を受け、計13回実施した。学習テーマは「イノーの生き物」「ウミガメ」「有孔虫」「ザトウクジラ」等で、総合研究センター職員を講師として派遣した。
学校の傾向として、本島北部および離島からの依頼が最も多く10件、中部地域からの依頼3件であった。また、今年度は高等学校からの依頼もあり、県内・県外それぞれ2件の対応を行った。
*1普及開発課 *2動物研究室
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