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  1. 6)各種資材を活用した植物培養土の開発(その2)~作出培養土素材を使ったコマツナ栽培試験~
沖縄美ら島財団総合研究所

亜熱帯性植物の調査研究

6)各種資材を活用した植物培養土の開発(その2)~作出培養土素材を使ったコマツナ栽培試験~

安里 維大*1

1.背景、実施目的

海洋博公園内から発生する植物性廃棄物(剪定枝、刈芝等)や、動物性廃棄物(餌残渣等)を、有効活用し園内植栽地等へ還元する資源循環技術を確立しゼロエミッション化の一助になる調査研究を目的である。

2.期間及び方法

1)期間(作業日程と図-1作業手順)
全調査期間:平成26年4月~平成27年12月
①素材混合:平成27年8 月10日
②播種:平成27年9月13日
③収穫①:平成27年10月25日
④収穫②:平成27年12月21日

  • 図-1 作業工程

  • 表-1 供試体と赤土の混合比率①②

2)素材の混合と栽培試験
作出した供試体(5種類)を土(国頭マージ)と混合して供試土壌とする。
(1)供試土壌の混合割合と播種前作業
必須利用材料(魚粕+植物チップ)に発酵助成材料(米糠、油粕、アカリファ、山羊糞)を各々混合し発酵処理を終了した供試材料5種類と赤土(国頭マージ)を混合して供試土壌を5種類試作(コントロールは必須利用材料と土のみ混合)。
①供試材料:赤土を 25:75、50:50、75:25、100:0の混合割合で3種類試作しビニールポット(供試土壌4ℓ充填)を各3反復、75ポット試作した(表-1①)。
②(供試材料:供試材料):赤土=2:2の2種類の試験を実施した各3反復、60ポット試作した(表-1②)。

(2)播種と経時的管理
コマツナ種子(はっけい)を30粒程度播種する。成長度合いに合わせて間引きを行い最終的に、5株を残して調査対象とする。収穫までの約40日間は定期的に写真管理を行い幼苗時の発芽数と残存数の把握、収穫後は生長量及びその他分析を行う(図-2)。その他分析とは硝酸態窒素量、SPAD、PH、等である。

(3)写真管理、各種調査

  • 写真-1 混合比別供試体(馴化)

  • 写真-2 播種直前の供試土壌(床)

  • 写真-3 収穫1週間前(27/10/18)

  • 写真-4 収穫後調査(袋の中は切り取った根)

  • 図-2 供試体別・混合比別 コマツナ残存数

  • (4)各種調査

    図-3 供試体別・混合比別 糖度とSPAD

  • 図-3 供試体別・混合比別 硫酸態窒素量とBrix値

  • 図-4 供試体別・混合比別 SPAD値と生体重

  • 図-4 供試体別・混合比別 生体重

  • 図-5 供試体別・混合比別 糖度

(4)結果(混合①)
①供試材料:赤土を 25:75、50:50、75:25、100:0の混合割合で3種類試作しビニールポット(供試土壌4ℓ充填)を各3反復、75ポット試作分に関して。
混合比の増加と硝酸態窒素量の増加が正の相関があることはある程度想定していたが、糖度において負の相関関係がみられたのは以外であった(図-3)。
SPAD値、生体重共に混合比50%を境に値が小さくなって同じような傾向が見られる(図-4)。
供試体別・混合比別の生体重はKnH50>AkH50、ArH25>ArH50の順であったが、ArHのみ25%混合であった(図-5)。SPAD値は混合比率に関係なくYgHが高い傾向が見られ糖度は混合比率に関係なくKnHが高い傾向が見られる(図-3)。混合比別の糖度はKnH25とYgH25の2つが高かった(図-5)
以上、こまつなの栽培はKnHとYgHに多く優位な点が見られ、KnHは腐熟度・発芽試験においても良い結果をおさめており、今後も「魚粉、植物チップの効率的利用法の確立」のための調査に外せない材料であると考えている。

(5)結果(混合②)
②(供試材料:供試材料):赤土=2:2の2種類の試験を実施した各3反復、60ポット試作分に関して、SPAD(葉緑値):Kn、Ar、Yg等の供試体単独よりYgH+ArKn、KnH、YgH,Ar、ArHの関係する組み合わせでコマツナの栽培試験を実施した。試験場所はトンネルハウス(高さ2m、幅2m)で屋根は遮光率20%の防虫網とビニールが掛けられている。温度はあるものの光は多少足りていない可能性がある(図-6)。
SPAD値 :収穫の1週間前に測定した。SPAD値は供試体単独より(YgH1.0Ar1.0、gH0.5Kn1.5)組合せた供試体の方が高い値を示している(図-6)。
試験ハウス屋外で栽培しているコマツナのSPAD値は40~45なので、照度の影響も考えられる。
糖度 :収穫直後に測定した。全体的に供試体単体より供試体同士を組合せた方が高い値を示している。
特にYgH0.5Kn1.5(山羊糞0.5:米糠1.5:赤土2)の組合せはBrix値9.7%と高い値を示した(図-8)。

硝酸態窒素 :YgH2.0で670ppmであった(図-9)。

  • 表-2 市販の国産野菜中の硝酸態窒素含有濃度

一番高い値を示したYgH2.0の硝酸態窒素量をイオン濃度に換算すると2700ppmである(表-2)。

  • 図-6 供試体別・SPAD値

  • 図-7 試験期間中の温度

  • 図-8 供試体別 コマツナの糖度

  • 図-9 供試体別 コマツナ硝酸態窒素量


図-10 栽培試験収穫調査

(6)結果(総合)と今後の課題と展開
硝酸イオン量は供試体量の増加と共に上昇、正の相関関係が有るが、逆に糖度は負の相関が現れる。SPAD値と生体重は供試材料混合比が50%を境に下がる傾向にあったが、試体を組合せることにより良い相乗効果が得られたものもあった。
今後の課題と展開は、照度や供試材料に含まれる成分(阻害成分含め)を詳細に調べ効率の良い培養土の作出を追及したいと考えている。分光計、光量子計を利用し精度の良い調査を、供試体の液肥化プログラムの中で成分の抽出や発酵による昇華物、根粒菌、菌根菌の付加した栽培技術と合わせて展開していく。

参考資料

  • 葉緑素計SPAD-502(ミノルタ)は農林水産省農蚕園芸局農産課の大規模経営土壌・作物・生産物分析システム実用化事業-(Soil & Plant Analyzer Development、略称SPAD)において、(財)農業振興奨励会、農林水産省農業研究センター・農業環境技術研究所の指導のもと開発された。
  • 糖度計:AS ONE APAL-J
  • (c)農林水産省 食品安全に関するリスクプロファイルシート(科学物質) 更新日:2015年12月2日 p4(独)農林水産消費技術センター(当時)が市販の野菜に含まれる硝酸態窒素の含有実態を調査より。

*1植物研究室

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