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  1. 7)沖縄こども環境調査隊2015
沖縄美ら島財団総合研究所

普及啓発の取り組み

7)沖縄こども環境調査隊2015

前田好美*1・鈴木瑞穂*1

1.はじめに

沖縄こども環境調査隊は、沖縄の将来を担う子どもたちが環境問題の現場を訪ね、実際に見て、聞いて、感じ学んだことを、新聞を中心としたマスメディアでの紹介やシンポジウム開催等により、情報を発信する学習ツアーである。調査隊員に選ばれた子どもたちが視察を行う過程で、「環境について自ら考え、行動する力を向上させる」ことを目的としている。沖縄タイムス社が主催し、当財団は共催として事業を行っており、今年度で7回目の実施となった。

2.事業内容

1)募集および応募状況

平成27年4月8日(水)から5月25日(月)にかけて「自然環境と私たち」と題した作文による小学5年生~中学3年生を対象に募集を行った(当初予定では5月15日を締切としていたが延長)。総応募者数は45名で、作文審査により24名を選考し、面接審査を行った。面接審査は6月14日(日)に実施し、最終的に小学生3名、中学生5名の計8名を調査隊隊員として選抜した。

2)認証式、事前学習

①認証式

7月5日(日)に認証式を行い、隊員が初めて顔を合わせた。認証式では沖縄タイムス社の新垣局長および当財団のセンター長後藤より、激励の言葉が贈られた。また、前年度のシンポジウム映像を視聴し、今後の活動内容について意識を高めた。認証式後にはオリエンテーションを行い、調査地での取材のポイントについて講義を行った。また、昨年同様に隊員OGによるスライド紹介と相談会を開催し、体験談や調査時のアドバイス等を新隊員へ伝えた。

②夏休み親子学習会

7月19日(日)、「夏休み親子学習会」を美ら島自然学校(名護市)において開催した。隊員及びその家族16名と一般募集により参加した親子32名の48名が、約4時間のプログラムに参加した。午前は「沖縄の川の生き物」と題し、名護市立博物館の村田尚史氏が講師を務め、河川環境やそこに棲む固有種について標本等を用いた解説を行った。午後は名護市汀間区の汀間川に移動し、村田氏及び美ら島研究センター職員の引率により、川の生き物観察を行った。

「夏休み親子学習会」終了後、隊員8名を対象とした講演「沖縄本島の成り立ちと固有種」を行った。講師は美ら島研究センター職員鈴木瑞穂(普及開発課)が務め、地質学的な側面から固有種が生まれる理由など、久米島視察の事前学習を行った。

③野外学習

7月23日(木)、やんばる野生生物保護センター ウフギー館(国頭村)を訪れ、同館の山本氏より「やんばるの野生生物と保護の取り組み」についての講義を聴講した。その後、館内を見学し、展示物等からやんばるに生息する生物や固有種について学んだ。午後は源河川に移動し、野外学習を行った。講師は美ら島研究センターの岡慎一郎(研究第一課)が務め、現地を観察しながら、リュウキュウアユや魚道の重要性について解説を行った。後半は川に入り、川の生物観察を行った。

3)久米島視察

図-1 久米島の固有種について学ぶ様子
図-1 久米島の固有種について学ぶ様子
図-2 白瀬川での固有種探し
図-2 白瀬川での固有種探し

7月28日(火)から7月31日(金)の日程で、久米島(沖縄県)の現地視察を行った。久米島ホタル館の協力を得て、久米島の固有種や環境と生物との繋がり、保全活動について調査した。視察日程は表-1の通り。

現地調査には、当財団から鈴木瑞穂(普及開発課)が同行し、隊員の健康及び安全面の管理、視察中の学習補助などを行った。

表-1 久米島視察日程

日付

内容

7/28(火)

那覇空港集合
出発式
久米島着
ホタル館野外活動
・ビオトープにて森・草地・沼・川の生き物探し
・ホタルと夜の生き物観察
夜間ミーティング

7/29(水)

森散策(ラムサール条約登録湿地)
川の生き物探し(白瀬川)
久米島ユイマール館見学
洞窟探検(ヤジヤーガマ)
夜間ミーティング

7/30(木)

漂着ゴミ清掃活動(真謝海岸)
海の生き物探し(真謝海岸)
シーカヤック、海の生き物探し(シンリ浜)

7/31(金)

隊員同士の意見交換、ホタル館館長への質疑応答
久米島博物館見学
地質観察(畳石、タチジャミ、ミーフガー)
那覇空港着
解散式

4)企業視察

本事業に賛同、ご協賛をいただいた企業の環境への取組みについて学ぶため、8月8日(土)、8月13日(木)、8月20日(木)、8月29日(土)の日程で、企業視察を行った。視察先は環境ソリューション(沖縄市)、沖縄コカ・コーラボトリング(大宜味村大保ダム)、沖縄海邦銀行本店(那覇市)、オキナワマリンリサーチセンター(恩納村)で、それぞれの企業での取組みについての解説を受けたり、実際に環境保護活動へ参加するなどした。

5)シンポジウム

図-3 シンポジウムで環境宣言を行う
図-3 シンポジウムで環境宣言を行う

平成27年9月5日(土)、タイムスホール(那覇市)において沖縄こども環境調査隊2015シンポジウム 「地球の声を伝えよう~沖縄の固有種と自然環境~」が開催された。シンポジウムでは事前学習をはじめ現地視察、企業訪問などを通して、調査隊員が経験し、学び感じ取ったことをまとめての報告を行った。当日の来場者数は、隊員の家族や関係者を含めて約120名であった。

始めに基調講演として、久米島の自然環境の調査・保護・保全活動に取り組む、久米島ホタル館館長の佐藤文保氏の講演「久米島の自然と生き物、こども達」が行われた。その後、環境調査隊員による報告が行われ、今回の活動を通して得た経験を言葉にして発信した。

シンポジウム終了後には、過去の調査隊員や協賛企業関係者も参加する懇親会を開催し、意見交換等を行った。

3.まとめ

開催7回目となった今年度は、昨年度と同様、視察内容をより掘り下げたものにすることを目的にテーマを設定して実施した。「沖縄の固有種」をテーマとした今年度は、固有種を中心に沖縄島と視察先の久米島における生物や環境の違い、または共通点を探し、身近な環境問題について学びを深める活動を行った。隊員たちは固有種だけではなく、それらを取り巻く普通種や環境との関わりについても注目していた。

また、一昨年から実施しているシンポジウム終了後の関係者懇親会では、OB・OGから子ども環境調査隊の経験が進路決定に影響を与えた等の話が聞かれ、人材育成事業としての成果が伺えた。



*1 普及開発課

 

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