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  1. 3)やんばる環境学習
沖縄美ら島財団総合研究所

普及啓発の取り組み

3)やんばる環境学習

前田好美*1・鈴木瑞穂*1・岡慎一郎*2

1.はじめに

学校教育と連携した普及啓発事業の確立は、そこに通う児童生徒の環境保全意識の向上を図る上で重要な要素の一つである。やんばる環境学習では、県内北部地域の小学校や教育委員会等と連携し、年に5回以上の学習を継続する「通年学習プログラム」の展開を図っている。また、1~2回完結型の「短期学習プログラム」を県内各地の小中学校を対象に展開した。

2.実施報告

1)通年学習プログラム

(1)ウミガメから学ぶ環境学習

平成27年度は、名護市立小中一貫教育校緑風学園および名護市立名護小学校と連携した学習を行った。当センター職員が講師となり、ウミガメやサンゴ、漂着物等について知識の提供を行った。

①名護市立小中一貫教育校 緑風学園

3年生と6年生を対象に、それぞれ年8回と9回の学習を行った。実施場所は緑風学園内施設、美ら島自然学校(図-1)等であった。

3年生は「ウミガメの成長」を主な学習テーマとした。事前学習としてプロジェクト・ワイルドの「ウミガメの試練」を用いてウミガメの一生を疑似体験した後、産卵場所となる砂浜環境を実際に観察した。その後、複数回にわたりウミガメ幼体の成長記録やスケッチによる形態観察(図-2)を行うことで発見した「気づき」を記録した。学習後はスライドやクイズ、創作劇等の手法を用いてまとめた。

6年生では「ウミガメとイノーの生き物」を主な学習テーマとした。イノー観察会や砂浜環境調査等、複数回の野外学習後、グループに分かれて調べ学習や調査を行い、ポスターや紙芝居形式にまとめた。

年度末には各学年で発表会を開催し、学習成果を発表した(図-3)。

  • 図-1 美ら島自然学校を利用した野外学習
    図-1 美ら島自然学校を利用した野外学習
  • 図-2 幼体をスケッチする児童(3年生)
    図-2 幼体をスケッチする児童(3年生)
  • 図-3 発表会後の様子(6年生)
    図-3 発表会後の様子(6年生)
図-4 イノー観察会の様子(本部町備瀬区)
図-4 イノー観察会の様子(本部町備瀬区)

②名護市立名護小学校

3年生を対象に、年5回の学習会を行った。学習のテーマは「イノーの生き物とウミガメ」で、1学期はイノーの生き物を題材に、事前学習を行った後、本部町備瀬区にてイノー観察会を行った(図-4)。2学期はウミガメを題材に学習を行い、「ウミガメの生態や形態」「ウミガメをとりまく環境」について講義した他、ウミガメ生体を用いて形態観察を行った。

(2)川の生き物教室

平成25年度より真喜屋小学校と連携して河川の環境学習を行っている。平成27年度も引き続き、小学校4年生を対象に年4回の学習会を行った。

当財団から淡水魚に詳しい職員を講師として派遣し、「沖縄の河川生態系について(概説)」、「地元のリュウキュウアユについて」、「川で安全に遊ぶ方法について」の計3回にわたり授業を行った。また、8月には野外学習として源河川での観察会を行った。

2)短期学習プログラム(出前授業)

図-5 出前授業の様子(嘉手納町立屋良小学校)
図-5 出前授業の様子(嘉手納町立屋良小学校)

地域の環境や動植物に対する興味関心を引き出すことを目的に、1~2回完結型の短期学習プログラムを、県内の小中学校を対象に実施した。

平成27年度は県内小学校9校からの依頼を受け、計10回実施した。学習テーマは「ウミガメ」「イノーの生き物」「サンゴ」「ザトウクジラ」等であった。学校の傾向として、宜野湾市や嘉手納町など本島中部からの依頼が最も多く、次いで宜野座村、伊是名村などの北部地域であった。対象学年は小学4年生が最も多く、実施時期は2学期に集中する傾向が見られた。

唯一、離島からの応募であった伊是名村では、伊是名小学校の児童を対象に2回の学習を実施するに至った(9月ウミガメ、10月ザトウクジラ)。離島であるという地理的ハンデにより、外部の講師による学習機会が少ないという声が教員からも聞かれ、当センターによる継続した学習への要望が得られた。

3)プログラムガイドの作成

小中学校、高等学校等を対象に当財団が実施している学習プログラムをまとめた「プログラムガイド」を作成した。幼稚園・小学校向け9件、中学校向け8件、高等学校向け4件を掲載し、ホームページで公表した。随時、更新を図ることで、学校関係者の要望にそった学習会を実施する。

沖縄本島の公立小学校では、4年生の国語の教科書にウミガメを題材にした教材が掲載されていることもあり、単元に入る前の事前学習として出前授業の要望が高まると予想される。今後は、単元教科の補助教材として沖縄の動植物を活かした学習を提案するなどし、財団独自の出前授業を企画することも検討する。



*1 普及開発課 *2 研究第一課

 

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