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  1. 1)海洋文化に関する調査研究
沖縄美ら島財団総合研究所

海洋文化の調査研究

1)海洋文化に関する調査研究

小野英彦*1・宮城幸織*1

1.はじめに

当財団が管理運営を担う海洋博公園内、海洋文化館には、オセアニア・東南アジア・日本の海洋文化を示す約2,000点の資料が所蔵されている。その素材や製造技法は多種多様であることから、素材や技法に合わせた取扱・点検・管理方法を確立し、マニュアル化することが望ましい。また、海洋文化資料の管理保存を適切に行うためには、長期間にわたり資料の劣化状況と温湿度の変化、真菌類や昆虫類などの生息状況等のデータを収集し、相互関係を分析する必要がある。本事業では、海洋文化資料の管理保存に関する知見を高め、海洋文化館の維持管理業務に寄与することを目的に、以下の取り組みを行った。

2.海洋文化館環境調査

平成27年10月に温湿度記録計(日置電気株式会社LR5001)を設置し、海洋文化館展示室及び収蔵庫の環境調査を開始した。平成28年3月には更に8か所に追加設置し、データ収集を継続している。温湿度計の設置場所は図-1の通りである。通常の施設管理業務中に収集したデータ及び菌類の環境調査結果とあわせて総合的に分析を行った結果、展示ホールでは相対湿度60%を上回る時期が長期間続き、80%を上回る時期もあることが確認された(図-2)。また、収蔵庫内の湿度は比較的安定しているが、湿度60%を超える時期が同様に確認された。平成28年2月には、赤外線サーモグラフィー(株式会社テストーTesto875)を用いて館内の温度差分布調査を行った(図-3)。
本調査により、展示ホール、収蔵庫ともにカビが発生しやすい環境であったことが示唆され、平成27年11月に展示資料の一部でカビが確認されたことの裏付けとなった。真菌類は相対湿度60%を超えなければ増殖しないため、除湿機を導入することにより、対策を行うことは可能である。
引き続きデータ収集を行い、平成28年度末には2年分のデータを用いた解析を行う予定である。

  • 図-1 海洋文化館内温湿度計設置場所
    図-1 海洋文化館内温湿度計設置場所
  • 図-2 海洋文化館内温湿度分布
    図-2 海洋文化館内温湿度分布
  • 図-3 赤外線サーモグラフィーによる温度差分布調査
    図-3 赤外線サーモグラフィーによる
    温度差分布調査

3.保存処理業務

平成27年11月、海洋文化館展示ホール(2階オセアニアゾーン)において、一部の資料にカビの発生が認められた。当該資料および周辺資料への被害拡大が懸念されたため、資料の状況調査を行い、早急に対応が必要と考えられたものについて処理を行った。調査の結果、虫害や腐朽などの劣化は認められず、カビの発生による被害のみが確認されたことから、以下の処置により対応を行った。

1)燻蒸処置

図-4 ガス燻蒸の様子
図-4 ガス燻蒸の様子

日時
平成28年2月24日(水)~26(金)
場所
海洋文化館 収蔵庫前室(図-4)
作業内容
ガス燻蒸
目的
殺虫・殺卵・殺カビ処理

2)防腐防虫処置

 図-5 防腐防虫を目的とした薬剤塗布
図-5 防腐防虫を目的とした薬剤塗布 図-6 処理後の養生
図-6 処理後の養生図-7 管理職員用マニュアル
図-7 管理職員用マニュアル

日時
平成28年3月21日(月)~23(水)
場所
海洋文化館 収蔵庫前室
作業内容

  1. 処理前写真撮影
  2. クリーニング・殺菌
  3. 必要な資料については防錆・強化処置等
  4. 防腐防虫処理(薬剤の塗布・噴霧)
  5. 処理後写真の撮影
 

4.資料取扱いマニュアルの作成

文化財の取り扱いや基本的な劣化とその対処方法を取りまとめた「資料取扱いマニュアル(基礎編)」を作成した。実際に収蔵品を扱う海洋文化館の解説員等、管理職員の研修用資料として利活用を図る。また、平成28年度には、「資料の管理保存マニュアル(海洋文化館編)」として、より専門性の高いマニュアルの作成を予定している。

 

*1普及開発課

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