普及啓発の取り組み
篠原礼乃*1・前田好美*1
沖縄こども環境調査隊は、沖縄の将来を担う子どもたちが環境問題の現場を訪ね、実際に見て、 聞いて、感じ学んだことを、新聞を中心としたマスメディアでの紹介やシンポジウム開催等により、情報を発信する学習ツアーである。調査隊員に選ばれた子どもたちが視察を行う過程で、「環境について自ら考え、行動する力を向上させる」ことを目的としている。沖縄タイムス社が主催し、当財団は共催として事業を行っており、今年度で6回目の実施となった。
平成26年5月15日(月)から6月20日(金) にかけて「自然環境と私たち」と題した作文による小学5年生~中学3年生を対象に募集を行った(当初予定では6月13日を締切としていたが延長)。総応募者数は49名で、作文審査により26名を選考し、面接審査を行った。面接審査は6月28日(土)に実施し、最終的に小学生1名、中学生7名の計8名を調査隊隊員として選抜した。
7月12日(土)に認証式を行い、隊員が初めて顔を合わせた。認証式では沖縄タイムス社の比嘉局長および当財団のセンター長後藤より、激励の言葉が贈られた。また、前年度のシンポジウム映像を視聴し、今後の活動内容について意識を高めた。認証式後にはオリエンテーションを行い、調査地での取材のポイントについて講義を行った。また、新たな試みとして前年度の隊員による相談会を開催し、体験談や当時の資料を新隊員と共有した。
7月27日(土)、「夏休み親子学習会」を沖縄美ら島財団総合研究センター(本部町)において開催した。隊員及びその家族20名と一般募集により参加した親子33名の計53名が、約4時間のプログラムに参加した。午前は「イノーの生き物と観察」と題し、美ら島研究センターの永田俊輔(普及開発課)が講師を務め、沖縄のイノーの地形や生息する生き物の紹介や、生き物観察をする際の注意点等について講演を行った。午後は本部町備瀬崎に移動し、美ら島研究センター職員の引率により、グループに分かれて生き物観察を行った。
「夏休み親子学習会」終了後、隊員8名を対象とした講演「沖縄県のサンゴ」を行った。講師は引き続き永田が務め、サンゴの生態や形態に関する解説、骨格標本を用いた形態観察を行った。
7月30日(水)、沖縄島でのサンゴ保全活動を学ぶこと、現地視察を前にシュノーケルでの活動を経験させることを目的に、恩納村で学習を行った。はじめにサンゴの生態についてクイズ形式で学習した後、養殖場の見学や植え付け体験を行った。その後、恩納漁港にてシュノーケル実習を行い、実際に植え付けられたサンゴを観察した。
8月4日(月)から8月7日(木)の日程で、石垣島(沖縄県)の現地視察を行った。現地隊員として小学生1名が合流し、石垣島のサンゴの生息状況や環境問題、保全活動について調査した。視察日程は表-1の通り。
現地調査には、当財団から前田好美(普及開発課)が同行し、隊員の健康及び安全面の管理、視察中の学習補助などを行った。
表-1 石垣島視察日程
日付 |
内容 |
---|---|
8/4(月) |
那覇空港集合 |
8/5(火) |
シュノーケリングにてサンゴ観察(米原ビーチ) |
8/6(水) |
わくわくサンゴセンター見学、サンゴ植え付け |
8/7(木) |
環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターにて、環境問題や保全について解説 |
平成26年9月7日(日)、てだこホール市民交流室(浦添市仲間)において沖縄こども環境調査隊2014シンポジウム 「地球の声を伝えよう~サンゴの生態と海の自然環境~」が開催された。シンポジウムでは事前学習をはじめ現地視察、企業訪問などを通して、調査隊員が経験し、学び感じ取ったことをまとめて報告を行った。当日の来場者数は、隊員の家族や関係者を含めて全112名であった。
始めに基調講演として、石垣島で親子を対象としたエコツアーに携わる大堀健司氏の講演「サンゴ礁ってホントに守らなければいけないの?~環境教育的視点からのサンゴ礁保全~」が行われた。その後、環境調査隊員による報告が行われ、今回の活動を通して得た経験を言葉にして発信した。
シンポジウム終了後には、過去の調査隊員や協賛企業関係者も参加する懇親会を開催し、意見交換等を行った。
開催6回目となった今年度は、視察内容をより掘り下げたものにすることを目的に、テーマを設定して実施した。「サンゴとサンゴ礁」をテーマとした今年度は、沖縄島と視察先の石垣島におけるサンゴ生息状況や周辺環境との関わり、保全活動方法を見比べるなどの活動を行った。テーマを限定したことで、隊員一人ひとりが集中して学ぶことができたようである。
また、昨年から実施しているシンポジウム終了後の関係者懇親会に加え、オリエンテーション時に前年度の調査隊員による相談会を実施した。過去の調査隊員との繋がりが深まる仕組みを整えたことで、新旧の隊員間において意見交換などの交流が生まれている様子が伺えた。
*1 普及開発課
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