普及啓発の取り組み
岡部晴菜*1・河津勲*1
ザトウクジラを対象としたホエールウォッチングは、小笠原で1980年代に開始されたのを皮切りに、1990年代には沖縄でも開始され、現在では冬季の観光業として大きな柱となりつつある。一方で、ザトウクジラの来遊頭数は急激な増加の兆しが見え始めている。この増加は観光業発展に寄与することに異論はないが、クジラへの影響や海難事故の恐れ等、様々な問題を秘めていることも事実である。今回、沖縄県内のホエールウォッチング業者を対象とし、ホエールウォッチング産業の今後の展望について議論するとともに当財団の調査結果の公表の場とすることを目的とし、「沖縄ザトウクジラ会議-沖縄のホエールウォッチングを考える-」を初開催した。
日時:平成25年12月9日(月)
場所:沖縄県立 名護青少年の家
本会議では基調講演1件、他講演2件及びパネルディスカッションを行った。沖縄県内外(沖縄本島、座間味島、奄美大島)から計55名の参加があった。
基調講演では、加藤秀弘氏(東京海洋大学大学院 教授)より「増えゆくザトウクジラとどうつきあうか」と題し、当財団との共同研究テーマであるザトウクジラの来遊頭数推定の結果が増加傾向にあることや頭数増加による船舶との衝突事故等のリスク管理の必要性などについて講演頂いた。
続く講演では、大坪弘和氏(座間味村ホエールウォッチング協会 事務局長)より「座間味村のホエールウォッチング」と題し、座間味島におけるホエールウォッチングの歴史や現在活用されている自主ルールなどを紹介頂いた。
当財団からは、「ここまでわかった沖縄のザトウクジラ」と題し、本種の個体識別数、遺伝学的な分析(共同研究:東京海洋大学、国際水産資源研究所)や他海域間との移動状況について、これまでの調査で得られた結果について紹介した。
最後に行ったパネルディスカッションでは、講演者と参加者間の質疑応答だけでなく、長年ウォッチング事業に携わる方から同業者へ向けたクジラへの接近方法に関する提言など参加者同士の積極的な意見交換も行われた(図-1)。
現在、沖縄県では主に伊江島周辺、那覇市周辺、座間味島周辺の三海域でホエールウォッチングが行われているが、同業者とはいえ、異なる海域の事業者同士が意見を交わす機会は非常に少ない。そのため、会議の参加者からは、海域や経験年数の違う同業者と情報や意見を交換できる場が持てて大変有意義であったとの声を多数頂いた。今後も沖縄ザトウクジラ会議の実施を継続していきたいと考える。
*1 研究第一課
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