亜熱帯性植物の調査研究
~絶滅危惧種リュウキュウベンケイの再発見、そして新品種の開発~
沖縄美ら島財団は、絶滅危惧種となっているリュウキュウベンケイを用いた新しい花 ちゅららを千葉大学との共同研究により開発しました。
オレンジ、ピンク、イエロー 透き通るように美しい。クリアな花色。
壁やデスクがいつも華やか。水につけていなくても、3週間きれいな花を楽しめる。
丈は50-80cm。長くて美しい茎を活かして生け花などに。ボリュームを活かしてブーケにも。
リュウキュウベンケイは冬に菜の花のような黄色い花を咲かせる植物です。東アジア地域に広く分布しますが、日本での自生地は限られ、沖縄県内ではもともと個体数が少なかった上に開発の影響もあり、絶滅の危機に瀕しています。
このリュウキュウベンケイを調査するきっかけとなったのが、平成10年に海洋博公園と沖縄県立博物館において開催された展示会「琉球王朝時代の植物標本~ペリーが持ち帰った植物たち~」でした。本展示会は、1854年から翌55年にかけて、ペリー提督一行が沖縄で採集した植物の標本を、144年ぶりに米国から里帰りさせ、一般公開を行ったものです。展示した植物標本数は200点近くに上り、その中にこのリュウキュウベンケイが含まれていたのです。せっかくのリュウキュウベンケイの展示ですので、標本の横に生体も並べて展示したいと考えましたが、当時はリュウキュウベンケイがどこに生えているかも、何も情報がない状態でした。
そこで、県内における存在の有無を確認するために、新聞やテレビなどを通じて、この貴重なリュウキュウベンケイについての情報提供を求めました。その結果、県内各所の庭などに、細々と栽培株が残存していることが明らかとなったのです。平成14年のことでした。その後も文献からの情報収集や県内の有識者からの聞き取り調査を継続して行ったところ、宮古諸島の1か所において自生している所が発見されました。発見後はその場所の環境の調査をするとともに一部を採集して、栽培下での保全に向けた取り組みを始めました。
リュウキュウベンケイは、美しい花姿と長い茎を有することから切り花として園芸利用することができるのではないかと考えました。そこで花の品種改良で多くの実績のある、千葉大学大学院園芸学研究科植物細胞工学研究室と共同研究を行い、リュウキュウベンケイを用いた園芸品種作出を試みたのです。
研究は平成15年から始まり、カランコエ属の他の数種と交配試験を行った結果、一部の交配にて切り花として実用的な雑種が生まれたのです。その後、栽培試験を行い、沖縄での営利生産に適する7品種を選抜、平成26年に品種登録を行いました。「ちゅらら」シリーズと名づけられたこれらの花は、水が無い状態でも3週間程度花持ちするという、今までに無い特徴を持った切り花として県内外で注目を集めています。
絶滅の危機にあるリュウキュウベンケイは、現在、園芸植物として沖縄県の産業に役立ち始めています。こうした産業化への可能性は、リュウキュウベンケイに限らずすべての野生植物にもあてはまると考えらます。絶滅の危機に瀕している植物たちは、一度失われてしまえば二度と手に入らない貴重な資源なのです。一見、対立していると感じられる「地域産業」と「種の保全」ですが、これを両立させ、地域の発展に繋げることができるのではないでしょうか。今後も同様な地域に根差した調査研究を進めていきたいと考えています。
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