亜熱帯性植物の調査研究
令和3年8月に小笠原諸島の福徳岡ノ場海底火山の噴火により発生した軽石が日本列島へ漂流し、琉球列島各所にも大量に漂着した。総合研究センター植物研究室では、この漂着した軽石の利活用に関する基礎的な知見を集めるため、諸性質についての調査に着手した。本稿では、軽石の水道水洗浄処理など各種の試みについてその結果を報告する。
1)漂着軽石の採取
令和3年10月に海洋博公園内に漂着した軽石の採取を実施した (写真-1A)。
2) 水道水処理と洗液の塩分濃度
まず、採取した軽石は、10mm目篩を用いてふるい分けした (写真-1B)。以降、使用する軽石はこの篩目を通過したものとした。次に、軽石をネット袋 (赤ネット、5kg用) に8.5L入れ、70L容ポリバケツに6袋 (2袋×3段) 詰めた。これに園芸用ホースで水道水を導入した。これを計3セット設置し (写真-2A)、水流量をおおむね300ml/minとした。なお、給水圧調整バルブは使用せず、ポリバケツよりオーバーフローした水を計量容器に受け、その目盛から水流量の調整を行った。なお、約48時間の流水処理の後、70時間までは浸漬処理とした。処理開始前および処理中にオーバーフロー水 (洗液) を採取し、その塩分濃度をポケット塩分計LAQUAtwin B-721 (堀場製作所製) で測定し、塩分濃度 (%) とした。
水道水で洗浄処理した後、ビニールハウス内で風乾を行い (写真-2C)、水道水洗浄軽石 (以降、洗浄軽石) とした。
3)塩分濃度の比較
洗浄の効果を検証するため、洗浄軽石および無処理の軽石それぞれを乳鉢で粉砕した。各粉末10gに蒸留水10mlを加え、6時間室温で溶出させた。各溶出液は、濾紙にてろ過後し、濾液の塩分濃度をポケット塩分計で測定した。
4)軽石を用いた栽培試験
洗浄または無処理の軽石を25および50% (v/v)で赤土または培養土 (高山ソイル工業製) に漉き込み、リーフレタスの栽培試験を行った。
1)漂着軽石の収集結果
海洋博公園内の海岸に漂着した軽石をシャベルやプラスチックてみ等を用いて採取した。作業について、シャベル等採取すると浜砂が多少なりとも混じる。極力、浜砂の採取を避けつつ軽石のみをすくい上げる必要があり、これにはプラスチックてみを用いるのが効率的であると思われた (写真-1A)。なお、採取後は軽石を土嚢袋に入れ、雨水を避け保管した。
2)水道水で洗浄した際の塩分濃度について
結果を図-1に示した。処理開始前を0時間とし、その塩分濃度は0.01%であった。これは、水道水に含まれる溶存Naイオンの影響と考えられ、ブランク値とみなした。水道水処理開始1時間後、塩分濃度は0.083±0.006 (%) であり、その後、2、3,4時間後はそれぞれ0.073±0.015、0.060±0.010および0.050±0.010 (%) であった。さらに、20時間後ではほぼブランク値と同程度まで塩分濃度は低下し、48時間以降の浸漬処理を続けてもその値は変わらなかった。今回の処理では、水流量を厳密に調整してはいないが、水道水圧が一定であったと仮定した場合、今回の水流量における処理時間は48時間以内にすることができると考えられた。
3)各種軽石の塩分濃度について
洗浄軽石および無処理軽石について、その溶出液中の塩分濃度を測定した。表-1に示した結果として、無処理軽石と比較しても洗浄軽石の溶出液中塩分濃度は低値であったことから、水道水での洗浄処理が一定の効果を有していると推察された。ただし、溶出液調製時の溶出率は洗浄および無処理軽石それぞれで同程度であることが測定の前提条件であるため、この点について今後の検討課題とした。
4)軽石を使用した栽培試験について
洗浄または無処理の軽石を赤土または培養土に混ぜリーフレタスを栽培した結果、軽石混合量の違いによるリーフレタスの収量では差がみられなかった。無処理軽石でも赤土100%の場合と同程度に生育し、生育障害もほぼみられなかった。
軽石の有効活用は、検討期間が短いので成果の可否は今後の研究を待つ(佐竹顧問:昭和薬科大学薬用植物園 研究員)。
*1植物研究室
Copyright (c) 2015 Okinawa Churashima Foundation. All right reserved.