亜熱帯性植物の調査研究
日本全国の希少植物の生息域外保全は、(公社) 日本植物園協会の主導の下、各地にある植物園協会加盟園のうち植物多様性保全拠点園を中心に進められている。当財団は、地域野生植物保全拠点園及びの種子保全拠点園として沖縄県を中心とした地域に生育する希少植物の生息域外保全を進めている。
また平成29年度より「種子保存に関する検討業務」のうち超低温保存に関する業務を受託し、種子及び胞子の超低温保存及び発芽試験等を実施している。
このほかにも、環境省生物多様性推進支援事業として、「沖縄県内に生育する国内希少野生動植物種の生息域外保全事業」が令和元年12月に、「沖縄県内に生育するキバナシュスラン、コウシュンシュスラン、ナンバンカモメランの生息域外保全」が令和3年6月に採択され、それぞれ助成金を受け生息域外保全に取り組んでいる。
また、自主事業としても、「沖縄県内に生育する希少植物の生息域外保全」を進めており、栽培 (培養)、種子保存に係る技術開発を行い、生息域外保全を実施している。
沖縄県をはじめ日本の希少植物を取り巻く環境は依然厳しい状況であるが、生息域外保全を推進し、生物多様性を守るこれら3つの取り組みのうち、主要な部分について報告する。
前年度業務において超低温保存の試行を検討すべき分類群としてラン科の絶滅危惧植物5種 (オキナワセッコク、エダウチヤガラ、ダイサギソウ、ツルラン、レンギョウエビネ) について発芽試験を実施した (写真-1)。今年度は保存前の乾燥条件試験を中心に実施し、5種それぞれの保存に供するための乾燥条件に関する知見の収集に努めた。今後保存後の発芽試験を実施し、保存条件についても明らかにしていく。
1)沖縄県内に生育する国内希少野生動植物種の生息域外保全
令和元年度より実施している本事業は、今年度が最終年度となる。今年度は、ヨナクニトキホコリの現地調査及び生息域外保全株の危険分散に向けた簡易栽培マニュアルの作成を中心に実施した。ヨナクニトキホコリの現地調査は、与那国島、石垣島でそれぞれ行い、開花が確認できたが種子の採集は困難であったため、現地の株への損傷を最小限に抑えるために挿し穂を採集し、可能な限り多系統の生息域外保全株を確保することに努めた。簡易栽培マニュアルは、ヨナグニイソノギク、サクヤアカササゲ、ハカマウラボシ、リュウキュウキンモウワラビの4種について、栽培、培養方法についてその手法を取りまとめた。さらに、令和元年度及び2年度に採集し、胞子の超低温保存を行ってきたイエジマチャセンシダ、ハカマウラボシに関して発芽試験を実施した。
2)沖縄県内に生育するキバナシュスラン、コウシュンシュスラン、ナンバンカモメランの生息域外保全
今年度採択された本事業については、現地での挿し穂 (開花後のシュート及びバックシュート) の確保、栽培・増殖、展示施設での普及啓発活動を令和5年度までの期間に実施予定である。今年度は、沖縄島、石垣島、西表島での野外調査を行い、生息域外保全用に挿し穂を採集した (写真-2)。挿し穂は、野外集団への影響を最小限に抑えるために、採取した個体が枯死しないよう配慮した部位の採取に努めた。次年度以降、モニタリング調査を行い、採取した個体の動態を確認する。
令和3年度は絶滅危惧植物等3種 (エダウチヤガラ、コナミキ、ホザキザクラ) について、栽培 (培養)、種子保存技術等の構築を試みた。海洋博公園内に生育するコナミキについては、発芽試験を実施し、今後種子保存と併せ生態の解明に向けた研究を実施予定である。エダウチヤガラについては、2で行った種子保存試験以外に、無菌培養条件の検討及び共生菌の解明に向けた現地発芽試験を実施した (写真-3)。ホザキザクラは保護保全に関する普及活動を目的に、海洋博公園で展示を行い新聞に掲載された。
少ない担当者人数で良くカバーされている。琉球列島フロラ自体改訂を要するため、可能な限り、生態・分類スタッフを増員して続行されたい(小山顧問:高知県立牧野植物園 顧問)。
環境保全に関しては、研究の実施状況、環境保全に関連する諸活動や委員会への参加など、期待以上の成果が得られていると思われる。公園管理に関しては予定通りの成果と思われるが、産業振興に関しては超低温保存技術の習得との関わりが読み取れなかったので、B評価とした(三位顧問:千葉大学 名誉教授)。
*1植物研究室
Copyright (c) 2015 Okinawa Churashima Foundation. All right reserved.