琉球文化の調査研究
本年度は、受託業務「多良間島仲筋区《舞台幕》の分析調査」と自主調査業務「芭蕉繊維の調査」を実施した。概要を以下に報告する。
本調査は、株式会社Nanseiより受託した業務である。多良間村ふるさと民俗学習館が所蔵する《舞台幕》について、紅型調査(写真1)、繊維構造調査(写真2)、色材調査(写真3)、顕微鏡写真撮影、文献資料調査を実施した。
繊維構造調査は、生地幅・幕幅・幕丈を測定、織密度・繊維の状態調査はマイクロスコープを使用し観察調査を実施し、調査データの分析を行った。紅型調査は、模様や技法の特徴について考察した。色材調査は、6種の調査機材を使用し非破壊による調査を実施し、調査データの分析・解析を行った。文献資料調査は、《舞台幕》に染められた銘「昭和六年十二月吉祥日/灌漑設備工事浚工紀念」について、多良間村史および平良市史をはじめとする文献資料を調査した。
以上の各調査内容と結果を報告書に纏めた。
昨年度に引き続き、芭蕉繊維に関する実物資料調査を行った。県内で芭蕉着物を所有する個人の着物10点の繊維調査を行い芭蕉繊維基礎調査データにまとめた。
その他、生引き芭蕉糸づくり(写真4)から経巻き(写真5)までの記録撮影を行った。
多良間島仲筋区《舞台幕》の分析調では、各調査において《舞台幕》の特徴となる結果が得られた。しかし、《舞台幕》の製作者および製作地については有力な情報は得られなかったことから、今後、情報収集を継続する。
芭蕉繊維の調査は、近世琉球の朝衣の技術復元を目的としている。所蔵(個人所有も含む)される芭蕉布の着物資料の調査を継続しつつ、今年度から生引き芭蕉糸づくりの記録撮影を開始した。次年度は、生引き芭蕉糸による芭蕉布製織の記録撮影を行う予定である。
重要な取り組みであり、その成果に期待したい。(高良顧問:琉球大学名誉教授)。
*1琉球文化財研究室
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