海洋文化の調査研究
本事業では令和2年度に引き続き、海洋文化館の展示・収蔵資料の取扱い・点検・管理方法を確立するために、展示・収蔵資料の状態調査を行うとともに、既存の資料リストの内容について精査し、その校訂を行った。
本調査の目的は、海洋文化館の資料を適切に管理・保存することにより、同館の安定的な運用を保証し、かつ研究施設としての財団の実績を蓄積して、資料の管理保存に関する役割を確立することにある。また、同技術を資源化することによって、将来の事業化も期待できる。 今年度は海洋文化館内の巡視温湿度記録簿、巡視資料状況記録簿等の情報を活用し、館内および収蔵庫内の温湿度変化等、環境調査を行い、資料の管理状況を把握する体制を整備した(表-1)。また、一部資料上に発生した白斑・カビについては、それぞれ現状を確認し、報告書を作成した(7月、9月)。さらに昨年度からの継続調査として、海洋文化館内および収蔵庫に保管されている資料の状態調査を実施し、適宜、資料リストに反映した(写真1)。
なお、展示・収蔵状況の改善のために、昨年度に引き続き、今年度も以下の対策を継続した。
・夏季における館内空調の24時間稼働試験
・過去にカビが発生した資料周辺の除湿剤設置
・同所への送風機ならびに除湿器の設置
以上について、国営部など財団内の関係部署と協力して対応するとともに調査を継続し、基礎データの作成・蓄積に努めるとともに、実用的な管理マニュアルの策定と実践を目指す。
本調査は、既存の海洋文化館所蔵資料データベースを精査し、同館の展示リニューアル作業やその前後の資料の移動などに起因する齟齬を解消するとともに、資料ごとの解説文の粗密の平準化や法量等重複する情報の整理を行って、より信頼度が高くコンパクトな資料リストの作成を目的とするものである。
今年度は令和2年度までに作成した資料データベース第4稿をもとに、資料リスト中、資料の状態を表示する箇所の見直しを行い、更新した(表-2)。今後は、引き続き重複する情報の整理と解説文の平準化という二つの作業を行う予定である。また、作業の各段階においては、リニューアル作業時の監修者等、外部有識者の協力も得て、同リストの完成度を継続的に高めていく。
保存資料の一部に白斑・カビが発生したようであるが、状況を把握して適切な処置を要する。また、収蔵庫を保存科学の温湿度の基準に従って管理することが求められる(須藤顧問:堺市博物館 館長)。
海洋文化館内資料の維持管理は着実に進めているように見受けられる。図録の制作をぜひ実現していただきたい(後藤顧問:南山大学 教授)。
表-1 令和3年度調査表(展示室内のコーナー別に温湿度変化をグラフ化している)
写真-1 資料状態調査(海洋文化館展示室)
表-2 資料リスト第5稿(赤字部分が修正作業箇所)
*1普及開発課
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