海洋生物の調査研究
造礁サンゴ類は南西諸島の生物多様性を支える重要な構成要素であり、水産業や観光業などとも関わりが深い一方で、白化などによる消長が生じる不安定な要素もはらんでいる。このような生態系の基盤生産者のモニタリング調査は、生態系の理解だけでなくその管理や変動の予測にきわめて重要な情報となる。
海洋博公園地先は「沖縄県の重要サンゴ群集」として指定されたエダコモンサンゴ群集が存在し、さらに礁斜面のサンゴ群集は沖縄本島内では優れた回復力を持っているとされる。そこで当財団ではサンゴ群集の現況の把握、変動の傾向や要因を明らかにすることを目的として、昭和63年から海洋博公園周辺のサンゴ群集のモニタリング調査を実施している。R1年度からはサンゴ群集を利用する魚類群集も調査対象に追加し、両者の関連性に関する検討も開始した。なお、本年度は予算削減のため定着板調査は実施を見送った。
図−1に示した5箇所に計10本のトランセクトラインを設け、一定の間隔に設置した方形枠(40cm×60cm)内におけるサンゴ被度と構成比を記録した(写真-1)。昨年度より調査地点全域においてサンゴ類被度の増加傾向がみられ、その傾向は本年度も継続した。特に水深3m地点におけるミドリイシ類の被度増加が顕著であり、浅い水深帯から徐々にサンゴ被度が回復しているものと考えられる。
サンゴ群集とそれに付随する魚類群集を把握し、両者の関連性を明らかにすることを目的として、3区域についてフォトトランセクト調査と同じ調査定線上に出現した魚類を目視観察により記録した。
その結果、191種7018個体の魚類を確認し(図-2)、調査を開始したR1年度(160種5,408個体)、R2年(191種7018個体)からさらに増加がみられた。特にミドリイシの急激な増加が観測されたアクアポリス区域の水深3m地点では出現個体数の増加が顕著であり、サンゴ礁回復との関連が示唆される。種数・個体数とも最も多かったのはスズメダイ科で、次いでベラ科、チョウチョウウオ科と続き、西太平洋域のサンゴ礁域における一般的な魚類群集であった。昨年度より見られるようになったサンゴ食性のテングカワハギ、およびクロベラはさらに個体数を増やしており、生態系の変遷という視点からも今後の動向を注視したい。
サンゴの調査研究は難しい。しかし、それがダメになる要因は何だろうか。これまで、高水温、オニヒトデなどが明らかになっているが、濁りや淡水化などの要因については明らかにされていない。しっかりフィールド(追跡調査)をやりながら、研究テーマをそのようなものにシフトした方がいいかもしれない。(亀崎顧問:岡山理科大学教授)。
*1動物研究室
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