亜熱帯性植物の調査研究
海洋博公園(以下、本園)では、台風による風倒木をはじめ、園内で伐採した幹枝を全てチップ化し、雑草の発生抑制および資源の循環利用を目的に園内に撒布してきた。マツ材線虫病 (以下、本病)被害材の破砕の基準は、粗大なチップでも厚さ15mm以下とされているが、本園での従来の破砕サイズは最小30mm程度までであった。つまり、本園における従来のチップ化処理では、本病への対策上適切ではなかった。
そこで、本園ではマツノマダラカミキリ成虫逸出抑制法を試験導入した(図-1)。本法は、本病被害木の幹枝から羽化脱出する成虫を、シート内に設置した粘着ネットで捕獲、あるいは死滅温度にまで達することのある密閉空間内で死亡させることにより、逸出を抑制するものである。本法は、本病被害木を園外まで持ち出す必要がないことや、農薬を使用しない点で環境に配慮した防除技術であること、更には、ローコストであることが利点であり、本園の管理上適切な方法であると期待される。
平成31年4月に発生した、本病被害木ではないリュウキュウマツの枯死木(材線虫病の病徴なし、成虫の羽化脱出及び死亡個体未確認)を用いて、約2ヶ月間園内で試験したところ、丸太の集積上部で50℃(マツノザイセンチュウの死滅温度)以上の温度が計15回記録された。また、調査期間中、カラスなどの鳥獣によるシートの破損も起こらなかった。以上のことから、本病防除法として効果が十分期待できると判断された。その一方で、雑草の繁茂しやすい場所であったため、被覆シートの中まで雑草が繁茂して裾部が浮いてしまったことにより、密閉空間を保つことができない時期があった。今後、本法を導入する上で、この反省点を活かしていきたい。尚、逸出抑制処理後の被害木については、そのまま、園内に設置しているエコフレーム内で堆肥化する予定である。以上の結果は辻本(2020)にて報告済みである。
緑化木の病虫害の病徴・感染経路等を把握し、病虫害の感染防除技術を検討することは有意義な調査である。 病徴・感染の要因解明と対応策、防除技術の検証を期待したい (池田顧問:琉球大学 名誉教授)。
気候変動による生物の生態系変化により、病害虫の様相も刻々と変わってきていると思います。病害虫によっては、甚大な被害を植物に及ぼすことにもなり、沖縄県の貴重な景観、観光資源への影響が大きいと考えられます。
そのような意味でも、取り組んでおられる調査・研究は必須のものと思われます。より調査・研究を進められることを希望いたします (上田顧問:花フェスタ記念公園 理事)。
*1植物研究室
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