1. 12)沖縄本島北部地域におけるチューリップ栽培に関する調査研究
沖縄美ら島財団総合研究所

亜熱帯性植物の調査研究

12)沖縄本島北部地域におけるチューリップ栽培に関する調査研究

田代亜紀羅*1

1.目的

沖縄県は亜熱帯気候に分類され、温帯に属する他県では広く普及している観賞用植物が、環境に適さないために普及していない例は少なくない。チューリップもその一つで、他県では数万球規模の大花壇展示が行われているのに対し、沖縄県では家庭栽培より大規模な花壇を見ることはほとんど無い。
チューリップ球根は、一定の低温に遭遇することで芽や根の生育が活発となるが、沖縄県では冬季の低温が不十分であるため、自然条件下で低温要求量を満たすことが難しい。当財団では、大規模チューリップ花壇の実現のため、球根冷蔵施設を所有する球根生産者と連携し、栽培展示を行った。

2.植物材料および方法

平成25年度から令和2年度にかけて、富山県球根農業協同組合(以下球根組合)で生産された球根合計114品種を導入した。球根は納品する前に、5℃設定の冷蔵室にて約2か月間保管し、人工的な低温に遭遇させた。平成25年度は2万球を、それ以降は毎年8万球を導入し、展示会を実施した。初期は多品種を導入し沖縄県に適した品種を選定した。後期には過去の試験で成績の良かった品種に加え、球根組合から推薦された品種を導入した。
納品された球根は、届けられた当日~数日以内に、よく耕耘された路地もしくはプランターに植え付けた。路地では1㎡あたり100球、25リットルプランター1基あたり16球を基準に植え付けを行った。11月~1月の期間に植え付け行い、雨天の日を除いて毎日潅水を行った。
チューリップ品種全てに対して、植え付けから見頃を迎えるまでに要した日数(以下至花日数)を記録した。沖縄県に適した品種を評価するため、咲きそろい、奇形の有無や生育の良否を総合して4段階で評価した。

3.結果および考察

写真-1
写真-1チューリップ開花状況(2021年2月5日撮影)

至花するまでの日数は年度、品種毎に異なり、最も早いものは平成28年度の「ジャンボピンク」で19日、最も遅いものは平成26年度の「バレリーナ」で69日であった。植え付けた中には、生育期間中に全てが枯死し、評価出来ない6品種が存在した。また同一品種でも、植え付け時期の気温および日照時間の違いから、生育期間にバラつきが生じ、暖冬では期間が短縮、寒冬では延長される傾向にあった。流通しているチューリップは開花速度に応じて、早咲き・中咲き・遅咲きといった生態的な分類が行われるが、沖縄県内では至花日数がこの分類通りには当てはまらないことが確認された。
生育の良否について、至花日数が長期間の品種ほど、咲きそろい等の評価が低く、栽培期間中の枯死も多い傾向がみられた。

4.まとめ

本研究では、過去8年間にわたる沖縄本島北部地域におけるチューリップ大規模展示に伴い、114品種の冷蔵球根を導入し栽培を行った。栽培成績を調査し、沖縄県の気候に適した品種を選抜し、品種毎に至花日数の記録を行った。その結果、植栽計画が改善され、中庭一面に広がるチューリップ畑を作ることが可能となった。 現在のところ、栽培するチューリップは全て1年毎に入れ替えを行なっている。今後は沖縄県内でも球根が肥大する品種を選抜し、次年度の展示への活用を図りたい。


*1植物課

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