1. 1)南西諸島の海洋民俗に関する調査
沖縄美ら島財団総合研究所

海洋文化の調査研究

1)南西諸島の海洋民俗に関する調査

板井英伸*1

1.はじめに

本事業では地域と連携して南西諸島の海にまつわる民俗に関する基盤的な調査研究を行うことを目的に、1)船漕ぎ儀礼の現況・変容、2)海を中心とした自然利用の民俗誌という2テーマについて文献・現地調査を行っている。今年度は船に加えて来訪神儀礼についての調査を計画した。(表-1)

表1

2.調査概要

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、調査を計画した6件のほか、予備的に文献調査を進めていた2件も中止となったため、現地調査ができなかった。
しかし、民俗事象の多くは非常時にこそ地域住民が特に重視する事柄が表面化することから、かかる事態について調査を行い、論文を執筆中である。

3.調査成果の利用

写真-1
写真-1 調査成果活用例(「海洋文化講座」テキスト)

写真-2
写真-2 海洋文化講座実施状況

過年度の成果を、令和3年1月9日に海洋文化館で実施した来訪神に関する講座に活用した(写真-1、2)。
なお、奄美大島の丸木舟に関する論考を執筆し、令和3年3月末現在、印刷中である(原野農芸博物館)。また、沖縄本島のハーリーに関する論文が沖縄民俗学会誌に採択され、令和3年3月末現在、印刷中となっている。

4.外部評価委員会コメント

全国的に毎年行われてきた祭礼が中止になり、沖縄でも同様であったのは、この種の活動にとって深刻であった。このような事態に対処することは文化・民俗研究の今後に極めて重要であり、全国の研究者が模索している。その点でウィルスの蔓延が沖縄の伝統文化に与えた影響についての論考を準備している点を重視したい。このような機会にこそ既存の映像や画像の編集や検索システムの確立などすべきであろう(後藤顧問:南山大学 教授)。
昨年度までの調査研究資料に基づいて講義を行い、奄美の丸木舟、本島北部のハーリー競技などについての論文を執筆して学会誌などに公表した点は評価できる。また、新型コロナウイルス感染症が沖縄民俗に与える影響という大きなテーマの論文も執筆中であり、その成果が期待される(須藤顧問:堺市博物館 館長)。


*1普及開発課

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